我が国では、65歳以上の約30%が1年間に一回以上転倒しているようです。今月の学術記事は、転倒予防と、岐阜大学医学部下畑先生からの最新医学情報です。
1.2024年12月の活動報告
創意溢れる指導によって、ポールウォーキングは、歩行の改善・健康づくりに加え、楽しい集いの場にもなっています。
・田村 芙美子さんの投稿
12/1 池上本門寺① 本蒲田1丁目から池上本門寺まで大田区の楽校の皆さんと数年振りにPWを楽しみました。昔の教え子さんたちは校長先生になられたりご立派に成長されたのに私はただ歳を重ねただけ。 本門寺で富士山を仰いで解散後ナマ友・FBFの事務局長さんに境内を案内して頂きました。鎌倉とも縁の深い日蓮宗のお寺は江戸時代の立派な珍しい墓地がたくさんあります。歴史上の方々始め有名人のお墓を巡らせて頂き、境内が広すぎて足が棒。
・田村 芙美子さんの投稿
蒲田PW行進曲 今日は蒲田でPWイベント。 長く続けていたお陰で 懐かしい方々に再会できました。池上本門寺ご案内下さったYさんありがとうございました。北鎌倉を歩きませんか。
・田村 芙美子さんの投稿
12/2 鎌倉ミステリーNo.10-① 鎌倉🍁のメッカ獅子舞から鎌倉アルプスの大平山~覚園寺を歩きました。イチョウの💛絨毯を踏みしめながら、始まったばかりの紅葉の🍁燃える色を見上げながらニコニコ元気に完歩。8日の②は後半のコースを変えます。 ご参加ありがとうございましたm(_ _)m
・スマイルチームさんの投稿
2024.11.29〜12.2 活動記録 ☺︎スマイルエクササイズ 13名 和室で出来るコンディショニングも とりいれました ☺︎上鶴間PW教室 14名 3回コース無事修理 半数の方がポール購入 自主サークル化決定 ☺︎上溝公民館自主企画事業打合せ 5回コースでのリズムエクササイズ 体験と発表 女性学級で1講座やらせて頂き好評 につき、自主企画事業として行う事 になりました ☺︎スマイル光が丘 20名 ラストに言葉遊びチェア体操で沢山 笑いました ☺︎公民館利用団体施設予約 5団体分
・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【楽しい街歩き】 船橋にこんな所があったの! そんな驚きの声が聞かれます #火曜日美姿勢コース #路地に佇む社寺を訪ねる街歩き 天気良し 案内の解説良し 聞くマナー良し 歩くマナー良し 皆がHAPPYで 良かったな〜💞 #船橋ウォーキングソサイエティ #船橋寺町巡り #日本一小さい東照宮 #因果地蔵尊 #飯盛り大仏 #お女郎地蔵 #桜桃忌 #太宰治
・田村 芙美子さんの投稿
12/3 広町緑地公園で黄葉ポールウォーキング 昨日の天園の写真と紛らわしい こちらは泥濘がありませんが坂道階段は頻繁にあります。12/22は公園主催の紅葉散策(自由参加)イベントがあります。全体が色づくのはまだまだ先なんですね。 富士山も目の前に!
・田村 芙美子さんの投稿
12/4 北鎌倉 爽やかで暖かな小春日和 テラススタジオでNewプログラム 鎌倉まで色づく秋を楽しみながらのんびり歩いて帰りました 円覚寺~東慶寺~途中 鉢の木でランチ~~~
・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
2024【日式健走 Advance Coach 進階教練培訓課】 課程圓滿結束!🎉 為期2天的進階教練培訓課程在滿滿的收穫中劃下句點!👏💪 在專業講師的悉心指導下, 學員們不僅深入學習了健走杖運動的進階技巧, 更強化了教學能力與團隊帶領能力, 為推廣健康運動邁出了關鍵一步!🌟🚶♂️🚶♀️ 這是一場充滿挑戰與成長的旅程, 學員們在理論與實作中不斷突破自我, 展現了對健走運動的熱忱與專注🔥。 每一步都走得穩健,每一次學習都收穫滿滿!📚✨ 感謝所有參與的學員與教練們, 因為你們的投入與努力, 讓這次課程充滿活力與意義💖! 接下來, 讓我們一起期待未來更多的健走推廣計畫, #共同邁向更健康更精彩的生活!🌏💪 #日式健走AdvanceCoach進階教練培訓課
・新井 恵さんの投稿
#スマイルチーム#四季彩の杜#薬師池 #ポールウォーキング#紅葉#お弁当 #プラントベースのお弁当 ポールウォーキング12月は大人の遠足ポカポカ陽氣で氣もち良く楽しい遠足でした〜😘
・田村 芙美子さんの投稿
12/6 渋谷PW教室3学期最終日 計測・ポールゲーム・お一人ずつモデルウォークでシメマシタ。全員の歩幅が、広がったのは素晴らしいです。 渋谷の街は少し寂しげ、クリスマス🎄🎅🎁✨の華やかさはショップのウィンドウのみ。夜になるとイルミネーションが綺麗なんでしょうね。あの幻想的な青の洞窟🟦とか。
・スマイルチームさんの投稿
2024.12.7 活動記録 活き活き中屋敷ライフ ポールウォーキング 10名 中屋敷中央公園集合 準備体操をして、境川沿いにウォーキング🐾本郷公園まで周りの景色を楽しみながら、今日の先導は89歳のゴローさん、しっかりしたウォーキングで交差点や横断歩道での確認、誘導までを行って下さいました。 公園ではみんなでおしゃべりタイム、自治会長から色々な情報もいただきました。帰路は親生会会長が先導、ゴローさんはしんがりで皆様を見守りながらのウォーキング。 帰路では珍しい青パパイヤの木にパパイヤもなっているし可愛らしいお花も咲いているのを見る事ができました。 中央公園にもどり整理体操と次回の連絡等、締めはゴローさんの『みなさん良いお年をね』で解散。 お天氣良く、氣温もウォーキングにちょうど良く、大変氣もちの良いウォーキングが出来ました😄 #ポールウォーキング #スマイルチーム #活き活き中屋敷ライフ
・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【急がば回れ】 基本振り返りからの インターバルへ 2024/12 /7 #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #土曜日海老川ロード #ノルディックウォーキング #ノルディックウォーク #ポールウォーキング #インターバルウォーキング #トレーニング3原理5原則
・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
感動~
・日本ポールウォーキング協会 npwaさんの投稿
12月7日にスキルアップ研修会福岡会場を開催しました。 福岡の藤崎MCプロをメイン講師に、アットホームな感じのセミナーでした。 長崎の平山MCプロも参加して下さり、充実した内容になりました。 参加者同士の情報交換もでき、有意義なセミナーとなりました。
・Naomi Sakaiさんの投稿
鎌倉ミステリーウォーキングvol.10 今回はアクティブ獅子舞谷コース。 12月2日(18名)と8日(25名) 2回の開催で鎌倉の紅葉🍁を楽しみながらたくさんの方に参加していただきました。 泥濘や丸太の橋を恐々と渡ったり… 銀杏の葉で黄色に染まった道を登りながら見上げると紅葉のグラデーション🍁とても綺麗でした。 そして楽しかったです。 ありがとうございました😊
・田村 芙美子さんの投稿
12/12 お昼前、一瞬でしたが小町通を歩いていたら 霙(みぞれ)のような粒が降りました。寒い筈ですね。 高齢者センターもクリスマスの飾りつけがされています。そしてどのPWサークルも忘年会の話で盛り上がっていますが、コロナや帯状疱疹にも気を付けなければ。
・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【寒さは何処に〜】 2024/12/12 ウォーキングとウォーキング の間に 色んな筋トレが次から次へと 入ります これが楽しい〜♫ #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #木曜日行田公園 #サーキットトレーニング #脂肪燃焼 #持久力UP #筋力UP
・スマイルチームさんの投稿
2024.12.13 活動記録 青空ポールウォーキング 9名 昨年包括支援センターでの事業で教室を行い、その後自主化し今年の1月から活動開始しました 私がコーチで一緒に行う日と、集まった仲間で自主練をする日の月2回の活動です 今日は私とアシスタントのMちゃんを除くと平均年齢80歳超えのハイシニアチームでした😆 楽しいが1番 集まって体操しておしゃべりして歩いて、お天気は少しどんよりでしたが 良く笑って皆さん明るい笑顔で帰っていかれました 楽しいと続けたくなるよね〜♡ #ポールエクササイズ #ポールウォーキング #スマイルチーム #みかん狩り #地域包括支援センター
・校條 諭さんの投稿
紅葉・黄葉ラストチャンス 12月の「気ままにポール歩き」は、地元コースでした。 善福寺川緑地・和田堀公園、大宮八幡宮、おおぞら公園、神田川遊歩道、塚山公園、柏の宮(かしのみや)公園 予報では昼頃でも気温12度で、おまけに風が強いということでしたが、快晴のひざしに当たりながら快適なウォーキングでした。 ウォーキングのあとは、おなじみ浜田山駅前のネパール料理店「まいた」でランチ忘年会を楽しみました。
・柳澤 光宏さんの投稿
先週「ぴんころウォーク」の実行委員会が開かれ、9月実施の最終的な報告があった。参加人数745名(市内309名、市外201名、県外から235名)。多くの方に参加いただきました。ありがとうございました。「健康」×「観光」が融合したよい大会になってきたと思います。特にプルーン食べ放題が大きなフックになっています。 しかし大幅に人数が増えたことで課題も浮き彫りに。アンケートでは駐車場の問題、農道など細い道や草の問題、開会式のマイクが後ろまで聞こえていなかったなど。概ね好評でまた来たいという内容が大多数だが、実行委員長としてこれらの問題をできるだけ解決し、次回さらによい大会にしたいと思います。あとは収支の問題も大きい。これまでは元気づくり支援金を活用し収支がトントンの事業だったが、次回以降は支援金なしでしっかり黒字にしないといけない。とはいえ700名以上集まる「ぴんころウォーク」なので、まずはそこに魅力を感じてくれる地元企業から協賛を募っていきたい。これを見た経営者の皆さん宜しくお願い致します。応援してください(^.^)
・佐藤 ヒロ子さんの投稿
#シニアポールウォーキング 2024/12/16 社会性は満点のメンバーです #転倒 #認知症予防 その二つに絞って 講堂内をフル活用 最期に一言スピーチ テーマは 「今年の自分を褒めてあげましょう」 皆さん、ニコニコしながら話します メンバーは今年も 充実した生活だったようです #船橋ウォーキングソサイエティ #ポールウォーキング #ノルディックウォーク #法典公民館
・田村 芙美子さんの投稿
12/16 本日は渋谷。 友達とブツの受け渡し+お茶 そして、渋谷区役所で年に1度の渋谷介護事業の横繋がりの MTGがありました。社協、包括支援、健康はつらつ事業、元気すこやか事業その他充実したフレイル予防等プログラムの各担当など合同のミィーティングで大変有意義な意見交換会でした。大田区もポール事業では1歩大きく進展していますが、文系・運動系両方をここまで進めているのは都内で唯一の充実活動だと思います。渋谷区民は幸せです☘️ これからzoomです。(スマホばかり使ってPCを放置していたので動かなくなってしまいました😢 仕方なくスマホで参加)
・森川 まことさんの投稿
2024年、年忘れウォーキング。
・田村 芙美子さんの投稿
12/17 青い空 風もなく暖かい冬の朝 広町緑地で輪になってストレッチ・筋トレを済ませ、今日は忘年会✨🍹🎶 at homeな腰越サークルはもう何年目になりますか。継続のコツは「楽しい」こと。お花見🌸会や忘年会も交流を深めます。20名のメンバーのうちスマホを使わないお一人(電話連絡)以外はLINEで繋がりました。
・佐藤 ヒロ子さんの投稿
昨日の様子です #船橋ウォーキングソサイエティ #火曜日美姿勢ウォーキング 2024/12/17 #行田公園イベント広場で #サーキットトレーニング 程よい高さの石垣で #腕立て伏せ #ボート漕ぎで腹筋 バラエティに富んだ筋トレが 出来ます 全天候型舗装になったので ウォーキングも思い切り 歩けるようになりました〜 目線は前に 中々良い調子です がっちりトレーニング 程々トレーニング 皆、自分の良い加減でね ♫
・新地 昌子さんの投稿
ポールウォーキングを始める動機は人それぞれ。同級会で同い年の歩きを見て、年寄りくさくて驚いたというFさんの変化ご覧ください。 #ポールウォーキング #ウォーキング #笠間市 #地域交流センターともべ
・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【根気よく身体に覚え込ませる】 2824/12/21 しっくり落ちるのは どの表現 ポールを使って歩くウォーキング 本日も感覚を身体に染み込ませます #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #ノルディックウォーキング #ポールウォーキング #ノルディックウォーク
・Naomi Sakaiさんの投稿
みなとみらいわくわくポールウォーキング ステッキ工房の店長さんのご紹介で変形性膝関節症の方、腰痛の方が初めて体験にいらしてくれました。 歩き始めは痛そうで心配しましたがポールに慣れてくると、 「ポールがあると楽に歩けます」 「腰痛が楽になりました」と。 ポールの効果はお2人を笑顔にしてくれました♪良かった! 今年始めたM Mわくわくポールウォーキングはシナノ ステッキ工房さんのご協力もあり多くの方に参加いただきました。 また来年、楽しく歩きましょう。 次回は1月10日(金)です😊 #みなとみらい #ステッキ工房 #わくわくポールウォーキング #楽しい仲間たち #アメリカンポーク試食会
・校條 諭さんの投稿
夕暮れ時の八丁堀~隅田川畔~小網町~人形町あたりの雰囲気を満喫 杉並ポール歩きの会(2023年休止)で講師としてお世話になってきた藤井直子さん(ポルク主宰)が企画された“ポール遠足”に参加しました。(2024/12/21) 江戸情緒の残る界隈をキョロキョロしながらノルディックウォーキング。クールダウンのあとは、人形町の名前から想像しなかった「生ハムとワインの店」で忘年会でした。 年のしめくくりのハッピーウォーキング。藤井さんと忘年会企画でお世話になった木村研一さんに感謝です。 ※当初、藤井さんのお立場を間違って書いていたので修正しました。(12/23)
・田村 芙美子さんの投稿
12/22 午前中は逗子で PW教室(年内歩き納め)① 午後は葉山の🥑ファームで冬支度。
・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
【2024健走杖輕旅行 宜蘭冬山站】活動圓滿結束! 🌿🚶♂️🚶♀️ 在宜蘭的冬山美景中, 一場健康活力的健走杖輕旅行順利完成!🌞💪 夥伴們在清新空氣與自然美景的陪伴下, 一邊健走,一邊享受身心舒暢的美好時光。🍃🏞️ 感謝所有參與的朋友們熱情投入, 讓活動增添了滿滿的活力與歡笑聲!😄👏 還有協會教練們的專業帶領, 讓大家體驗到了健走杖運動的多重益處,既健康又有趣!✨🎯 期待下次的健走旅程,與大家再次相見, 共同走出健康新里程!🚶♀️🚶♂️🌟 #雷公農園 #健走杖輕旅行宜蘭冬山站 #台灣健走杖運動推廣協會
・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 〜eveの日〜❗️ 佐久大学看護学部/1年生のPW実習報告会がありました。 毎年1年生がポールウォーキングをし参加者とふれあい佐久地域と皆さんの健康的な生き方の調査?が目的です。 コロナ時に始まり4年目で、その時体験した4年生も参加し新旧入り混じった和やかな報告会でした。 生徒の皆さん〜 同席したコーチの皆んな〜 お疲れ様でした。 〜Have a fun eve〜❣️
・佐藤 ヒロ子さんの投稿
#2024年歩き納め #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #木曜日行田公園 暖かで軽やかに2024年を締めくくり 皆で集まるから元気になっちゃうね〜 そんなこんなの1年間 小さな元気の積み重ねが嬉しいね みんな今年も ありがとう〜
来月以降の開催
・みんなの元気学校さんの投稿
志木いろはウォークフェスタ 第9回ノルディックウォーキング・ポールウォーキング全国大会(埼玉県 志木市中宗岡1-1-1 志木市役所グランドテラス)
2.PW関連学術ニュース
2-1)転倒予防
65歳以上の約30%が1年間に一回以上転倒し、転倒の約5%で骨折が発生し、しかも、転倒発生と転倒恐怖保有の割合は、加齢と共に増加し、いずれも女性の方が高い傾向にあります(筑波大学山田実教授のユーチューブ動画より)。
10月10日は『転倒予防の日』ですが、2024年9月10日の政府広報オンラインに『たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?』と題する以下の記事が掲載されています。
家の中や家の周りで、つまずいたり滑ったりして転びそうになったことはありませんか。年を重ねるにつれて転びやすくなり、骨折などのけがをしやすくなります。特に65歳以上の高齢者は要注意です。骨折がきっかけで寝たきりになってしまうことも。転倒事故が起こりやすい家の中や周囲の危険な箇所をチェックしながら、事故を防ぐための注意点を紹介します。
動画
転倒予防に足もとチェック! 交通事故の3倍!?暮らしの中の危険【字幕付】
(2分59秒)
年齢と共に増える、暮らしの中の危険。簡単にできる「足もとチェック」で転倒事故を防ぎましょう。【字幕付】ナレーション:貫地谷しほり
目次
1.高齢者にとっての転倒の危険性とは?
2.転倒の主な原因は?
3.自宅で転倒リスクがある場所は?
4.外出時に転倒リスクがある場所は?
1高齢者にとっての転倒の危険性とは?
高齢者にとって、転倒・転落は骨折や頭部外傷等の大けがにつながりやすく、それが原因で介護が必要な状態になることもあります。たとえ、骨折の症状が軽くても若いときに比べると回復に時間がかかります。さらに、転倒による不安や恐怖で何事にも意欲がわかず、気力がなくなり、活動性が低下し、活動性の低下が転倒リスクの増加を招くという悪循環につながっていきます。
「令和4年国民生活基礎調査(厚生労働省)」によれば、高齢者の介護が必要となった主な原因は、認知症、脳血管疾患(脳卒中)に続き、「骨折・転倒」が13.9%を占め、高齢による衰弱より多くなっています。
また、「令和4年人口動態統計(厚生労働省)」によれば、高齢者の転倒・転落・墜落による死亡者数は10,809人で、交通事故による死亡者数の5倍以上となります。こうした転倒の危険性を、高齢者本人だけでなく、家族や地域の方など身近にいる方々も気づき意識し転倒事故を防ぎましょう。
2転倒の主な原因は?
転倒の主な原因は、(1)加齢による身体機能の低下、(2)病気や薬の影響、(3)運動不足です。
加齢に伴い身体機能が徐々に低下し、筋力、バランス能力、瞬発力、持久力、柔軟性が衰え、とっさの反射的防御動作が、素早く力強く行えなくなります。また、自分自身の予測・期待する動作と現実の動作との間に齟齬が生まれて転倒を引き起こすことがあります。
また、年を重ねると、いくつもの病気を抱え、何種類も薬を飲んでいる人も少なくありません。薬の作用・副作用によって、立ちくらみやふらつく症状が出るなどして転倒しやすい状態になっている場合がありますので、定期的に薬の種類と量を、主治医と薬剤師に相談しましょう。
さらに、自宅で閉じこもりがちになると、日常的な身体活動が減少して、運動機能や感覚機能が弱まり、その結果、転倒のリスクが高まります。転倒を防ぐには、日頃から可能な限り体を動かし、身体機能の維持に努めましょう。
3自宅で転倒リスクがある場所は?
高齢者の転倒事故の多くは、住み慣れた自宅で発生しています。東京消防庁によれば、およそ6割は自宅で転んでおり、具体的な場所は、居間・寝室、玄関、階段・廊下、浴室です。こうした実態を知り、身近な場所に転倒リスクがあると意識しましょう。そして、高齢者の生活環境を確認し、段差をなくす、雑誌や新聞を片付けるなど少しでも危険を減らし、万が一、転倒しても大けがに至らない工夫をする必要があります。
居間
1. コードの配線は歩く動線を避ける。壁をはわせるか、部屋の奥にまとめる
2. 引っ掛かりやすいカーペットやこたつ布団は使用しない。めくれやすいカーペットの下には滑り止めを敷く
3. 床に物を置かない
4. 1cmから2cmの段差はつまずきやすいので、スロープをつけるか、手すりをつける
玄関
1. 手すりをつける
2. 玄関マットの下には滑り止めを敷く
3. 靴の着脱のために椅子を置く
4. 上がりかまちが高い場合は踏み台を置く
廊下・階段
1. 手すりをつける
2. 床に物を置かない
3. 転倒の原因になる滑りやすい靴下やスリッパは使用しない
4. 足元がよく見えるよう照明を明るくする
5. 階段にすべり止めをつける
ベッド
1. ベッドを壁に面するように配置し片方からの転落リスクをなくす
2. ベッドガードと呼ばれる柵を利用する(※)
3. 万が一、転落しても衝撃が緩和できるよう低床のベッドに変更する
※ベッドガードを使用する際には、柵やベッドとのすき間に首や体の一部が挟まらないように注意してください。
浴室
1. 椅子に座って着替える
2. 入口の段差が高い場合は、すのこやスロープで段差を小さくする
3. すべりにくい床材にするか、すべり止めマットを敷く
4. 手すりをつける
4外出時に転倒リスクがある場所は?
近所の散歩や買い物でちょっと外へ。そんな身近な場所でも転倒しやすい場所があります。特に雨の日は、道路や建物内の床が濡れて滑りやすいため注意が必要です。また、スーパーなどでの買い物中は商品に気をとられすぎないよう、足元や周囲にも気を付けましょう。危険だと感じたらお店の方へ伝え、安全策をとってもらいましょう。
店舗内
• 床の水濡れで転倒(雨やケースからの水たれ)
• 商品箱や荷物用台車にぶつかる
• 野菜くずや落下物につまずく
• 階段や段差で転倒
店舗入口
• 床の水濡れで転倒(雨など)
• 段差につまずく
• マットのふちにつまずく
• 濡れたスロープで滑って転倒
道路
• 濡れた道路(雨など)で転倒
• 濡れたマンホールのふたやグレーチングで滑って転倒
• 歩道と道路の段差につまずく・足を踏み外す
駐車場
• 車止めにつまずく
• 側溝につまずく
• 段差につまずく
→参考
• 消費者庁「10月10日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!-転倒事故の約半数が住み慣れた自宅で発生しています-」
(取材協力:消費者庁 文責:政府広報オンライン)
関連リンク
• 消費者庁「みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故」
関連情報
筑波大学大学院人間系の山田実教授が、転倒予防に関する情報を2つ、最近、発信されています。『転倒予防に関するユーチューブ動画No.180~No.186』と、書籍『転ばない足腰―老年学の専門家が教える100歳になっても自分でしっかり歩ける身体をつくる「21の体操」と「習慣化の秘訣」』です。
前者は、山田教授の『web版集いのひろば』の登録者向け動画です(先生の研究室『筑波大学介護予防研究室』のホームページ(https://www.yamada-lab.tokyo/)から登録でき、年会費などの費用は不要です)が、最新の研究成果を分かりやすく解説しています。
後者は、一般読者向けの啓蒙書です(https://str.toyokeizai.net/books/9784492047743/)。
2-2)岐阜大学医学部下畑先生からの最新医学情報(2024年12月)
2-2-1)ヒトの脳のニューロン数は本当に860億か?科学的根拠を再検討する
**岐阜大学医学部下畑先生の2024年12月1日のFB投稿です**
ヒトの脳のニューロン(神経細胞)数は「860億」と広く知られています(図3).しかしこの数値が科学的にどれほど正確なのか疑問を投げかける興味深いエッセイがBrain誌に発表されました.このエッセイの著者はオックスフォード大学の数学者Alain Goriely教授です.Goriely教授は,科学におけるデータの扱い方に厳密さを求める立場から,この「860億」という数字の根拠を詳細に検討しています.
論文によると「860億」という推定値は,2009年に発表された研究で,「等方性フラクショネーター法」という手法を用いて,4名(!)の成人男性(年齢50歳から71歳)の脳を解析し得られたものだそうです.この方法は,脳全体の細胞数を効率的に推定するために開発された方法で,具体的には,脳組織を物理的・化学的に均一なスラリー(液状混合物)に分解し,その中に含まれる細胞核を染色してカウントするようです.ニューロンを特定するためのマーカーとしてNeuNというタンパク質に対する抗体を使用しています(図2).しかし,NeuNはすべてのニューロンで一様に発現するわけではなく,ニューロンの成熟度や種類によって発現レベルが異なるため,すべてのニューロンが正確にカウントされる保証はないそうです.
さらに対象者がわずか4名という小規模なサンプルサイズだったため,統計的な信頼性に限界があります.860億という平均値が得られたものの,実際の信頼区間は730億から990億という幅広い範囲を持つことを計算で示しています.
2013年には,71歳から84歳の女性5名を対象に,同じ手法を用いた別の研究が行われました.この研究では平均ニューロン数が673億と報告され,信頼区間は615億から731億と推定されています.図1は,この研究で得られた脳重量とニューロン数の関係が示されていますが,重量が軽い脳が多くのニューロンを持つなど,両者の間には相関が見られないことが一見して分かります.
以上の結果から,「860億」という数字を断定的に使用することには慎重であるべきだと著者は主張しています.このような推定値が誤用されると,これに基づく研究や議論が偏った方向に進むリスクも指摘されています.
Goriely教授は,「ヒトの脳のニューロン数が正確にいくつか?」という問いに対する答えとして,現時点では「正確な数は分からない」と述べています.この「ヒトの脳のニューロン数が正確にいくつか?」と問いは,単なる知的好奇心をくすぐるというだけでなく,同時に科学的な厳密さとデータ解釈の重要性を考え直すきっかけを与えてくれるものとなりました.
Brain, awae390, https://doi.org/10.1093/brain/awae390
2-2-2)ミトコンドリアの真の姿
**岐阜大学医学部下畑先生の2024年12月3日のFB投稿です**
ミトコンドリアはパーキンソン病,脳卒中,認知症や老化など様々な病態において重要な役割を果たしています.動画はコロンビア大学のMartin Picard先生(@MitoPsychoBio)がSNSに投稿した,1つの細胞内のミトコンドリアを示したものです(オリジナルは@chillinwithpfn1).何百もの曲がりくねった細胞内小器官がエネルギーと情報を感知し,処理し,信号を送っています.初めてミトコンドリアの真の姿を示した動画を見たときには感動しましたし,教科書とのあまりの違いに驚きました.科学にはこういうことがまだまだたくさんあるのだろうと思います.
2-2-3)オリーブオイル摂取を増やし,マヨネーズをオリーブオイルに換えると認知症を予防できそう!
**岐阜大学医学部下畑先生の2024年12月7日のFB投稿です**
アメリカのハーバード大学を中心とする研究チームによる大規模なコホート研究が,JAMA Network Open誌に掲載されています.この研究では,認知症予防に有効らしいとされてきた地中海式食事(野菜や果物,全粒雑穀類,豆類,オリーブオイル,適量のワイン等;図1)のなかでオリーブオイルに着目し,米国成人において認知症予防に有効かを検討しています.具体的にはオリーブオイル摂取量が,認知症関連の死亡リスクを減少させるかを調べています.またマーガリンやマヨネーズ,バター,植物油といった他の脂質をオリーブオイルに置き換えることで,死亡リスクに変化が生じるかも評価しています.
方法としては,なんと28年間にわたり医療従事者を対象に実施された「看護師健康調査(NHS)」と「医療従事者追跡調査(HPFS)」のデータを用いています.対象は1990年時点で心血管疾患やがんを持たない9万2383人で,4年ごとに行われた食品摂取頻度アンケートを基にオリーブオイル摂取量を推定しました.摂取量は「月1回未満,0〜4.5g/日,4.5〜7g/日,7g/日以上」の4つのカテゴリーに分類し,認知症関連死亡リスクとの関連を分析しています.食事の質は,地中海式食事スコア(AMEDスコア)およびAlternative Healthy Eating Index(AHEI)で評価しました.
さて結果ですが,1日7g以上のオリーブオイルを摂取する群は,月1回未満の群と比較して認知症関連死亡リスクが28%も低いことが示されました(ハザード比[HR] 0.72, 95%信頼区間0.64-0.81, 図2).この効果は,遺伝要因であるAPOE ε4遺伝子や食事の質(AMEDスコアおよびAHEI)で調整した後でも認められました.ただし性差では,女性でこのリスク低下の効果が顕著であったのに対し(HR 0.67),男性では0.87で有意差は認められませんでした(残念).
さらに,マーガリンやマヨネーズを1日5 gのオリーブオイルに置き換えた場合,認知症関連死亡リスクがそれぞれ8%(HR 0.92, 95% CI 0.88-0.96)および14%(HR 0.86, 95% CI 0.80-0.93)低下しました(図3).しかし,バターや他の植物油(大豆油,菜種油など)と置換しても効果は認められませんでした.
以上より,オリーブオイルの摂取を増やし,マーガリンやマヨネーズをオリーブオイルに置換することで認知症予防につながる可能性があるようです.オリーブオイルにはモノ不飽和脂肪酸や抗酸化物質(ビタミンE,ポリフェノール)が含まれ,これらが抗炎症作用や神経保護作用を通じて認知症リスクを低減している可能性があります.研究の限界としては,観察研究であるため因果関係の確定ができない点や,対象者が医療従事者のみであった点が挙げられると思われます.またオリーブオイルの種類(エクストラバージン,バージン,ピュア,精製)による違いは分かりません.しかし,28年という長期の追跡期間と大規模なデータを用いている点はこの研究の強みと思います.
おそらく高品質のエクストラバージンオイルを,1日7g以上を目安に取ると良いように思います.大さじ1杯(約13.5g),小さじ1杯(約4.5g)なので,小さじ1杯半程度になります.サラダ1人分に小さじ1~2杯をかけたり,フランスパンにつけたり,パスタやスープに小さじ1杯をかけるという感じかと思います.女性で効果が顕著ですが,私も試してみようと思います.
Tessier AJ, et al. Consumption of Olive Oil and Diet Quality and Risk of Dementia-Related Death. JAMA Network Open. 2024;7(5):e2410021.(doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2024.10021)
2-2-4)パーキンソン病と頭痛の意外な関係@第52回頭痛学会総会(新横浜)
**岐阜大学医学部の下畑先生の2024年12月7日のFB投稿です**
第52回頭痛学会総会(大会長 永田栄一郎先生)において,シンポジウム「片頭痛と神経疾患」のなかで,「パーキンソン病と頭痛」という講演をさせていただきました.8年前の頭痛学会で,同じテーマでシンポジストを担当し,歯が立たなかった内容ですが,今回,再挑戦の機会をいただきました.①片頭痛患者さんがパーキンソン病を発症すると片頭痛が改善する理由,②ドパミン作動薬が一部のパーキンソン病患者の片頭痛を改善する理由.③片頭痛がパーキンソン病の危険因子である理由,について考察しました.スライドは以下よりご覧いただけます.座長の立花久大先生,松浦徹先生,どうもありがとうございました.
https://www.docswell.com/…/800…/K82W61-2024-12-07-202408
2-2-5)脳にダメージ「コロナ後遺症」なぜ起きる?記憶や注意力が障害されるわけ@withnews / Yahooニュース
**岐阜大学医学部の下畑先生の2024年12月9日のFB投稿です**
取材をいただき,新型コロナ感染症による神経後遺症について,最新の知見を分かりやすく記事にしていただきました.ワクチン接種についてはいろいろな考え方があって良いと思いますが,まず判明している科学的な事実を知って頂くことが大切だと思います.
2-2-6)アミロイドβ抗体薬による脳萎縮は「アミロイド除去関連偽萎縮である」は本当か?
**岐阜大学医学部の下畑先生の2024年12月17日のFB投稿です**
アルツハイマー病では,脳の萎縮(=体積の減少)が病態の進行を示す重要な指標とされてきました.しかし,アミロイドβを除去するアミロイドβ抗体薬(レカネマブ,ドナネマブなど)の臨床試験では,治療群において脳体積が対照群よりも速く減少するという「矛盾した」結果が報告されています.過去のブログでも紹介しました(https://tinyurl.com/2bzfv7wq).
これに対してLancet Neurology誌の「personal view」欄に「アミロイド除去に伴う偽萎縮(pseudo-atrophy)」という新しい解釈が提唱されています.この抗体薬による脳萎縮は神経変性の加速を意味しないという説です.
この論文の中でも重要なのは図1A-Fの6つのグラフです(AとEのみ提示).
A. 脳全体の体積減少とアミロイド除去量:
抗体薬によるアミロイド除去が多いほど,脳全体の体積減少が顕著となる.
B. 脳室体積拡大とアミロイド除去量:
アミロイド除去量が多いほど,脳室拡大が顕著となる.
C・D. ARIA発生率との関連:
ARIAの発生率が高い抗体薬では,脳の体積減少や脳室拡大がより顕著となる.
E・F. 臨床転帰(CDR-SBスコア)との関連:
脳の体積減少や脳室拡大は,必ずしもCDR-SBスコアの悪化と相関していない.
著者らはこのE,Fのデータより,治療群では脳体積が減少しながらも認知機能の低下は抑制される傾向があるとし,脳の体積減少が「治療の悪影響」ではなく,アミロイドβ除去による反応と捉えています.そして脳体積の減少は,アミロイドの除去,その周囲のグリア細胞や炎症細胞への影響,アミロイド関連画像異常(ARIA)や液体シフト(脳脊髄液動態への影響)に関連する可能性が高く,真の萎縮ではなく,「偽萎縮」と呼ぶのが適切であると述べています.つまりこれらの脳体積変化は治療効果の一部だということです.
しかし著者らも述べていますが,この脳萎縮が真に「安全」かつ「治療効果の一部」と言えるかについては,長期的なデータが不足しています.議論された臨床試験は18〜24か月程度の観察に留まっており,脳萎縮を呈した患者の認知機能の長期フォローアップが必要だと思います.また個々の症例データが議論されていない点も問題で,ApoE遺伝子多型やARIA,さらにドナネマブで報告されている24週の時点のNfLの一過性増加(=神経軸索の損傷)などと脳萎縮の関連を検討する必要があると思います.
私の感想をまとめると,興味深い「personal view」とは思いますが,現時点で「脳萎縮は安全」と結論づけるにはデータが不十分で,長期試験や個々の患者レベルのデータ解析が必要だと思います.今後の臨床試験や症例報告にて,脳の体積変化に注目することが重要だと思います.最後にもう1点,この論文の利益相反(COI)ですが,7名の著者中,Biogenの記載があるのが5名,Eisaiが4名,Lillyが3名です(いずれともCOIがない著者は2名).論文の透明性が確保されているわけですが,最終的にはこの情報をもとに読者が批判的に論文を評価することが求められます.
Belder CRS, et al. Brain volume change following anti-amyloid β immunotherapy for Alzheimer’s disease: amyloid-removal-related pseudo-atrophy. Lancet Neurol. 2024 Oct;23(10):1025-1034.(doi.org/10.1016/S1474-4422(24)00335-1)
2-2-7)筋萎縮性側索硬化症ではglymphatic systemの障害が生じている
**岐阜大学医学部の下畑先生の2024年12月21日のFB投稿です**
筋萎縮性側索硬化症(ALS)と原発性側索硬化症(PLS)におけるglymphatic systemの機能を縦断的に評価した研究が,カナダ・カルガリー大学等からBrain誌に報告されました.
対象はALS患者18名,PLS患者5名,健常者22名の合計45名で,0か月,4か月,8か月の3つの時点でMRIを用いてglymphatic systemの機能を測定しました.方法は拡散テンソルイメージング(DTI)を用いてglymphatic systemを間接的に評価するDTI-ALPS法というものです.
さて結果ですが,ALS群のglymphatic機能(DTI-ALPS指数)は,健常者およびPLS群に比べて有意に低下していました(図1).この低下は,4か月,8か月と,病期が進行しても持続していました(図2).一方で,PLS群では健常者と同等にglymphatic機能が維持されていました.またALS患者におけるDTI-ALPS指数の低下は年齢とともに顕著になりましたが(図3),疾患の進行度や機能評価スコア(ALSFRS-R)との関連は認めませんでした.
以上より,ALSの病態機序にglymphatic systemの障害が関与する可能性が示唆されました.また同じ運動ニューロン疾患であっても,ALSとPLSではglymphatic systemの障害に関しては異なることが示されました.つまり両疾患で,異常タンパクの蓄積具合が異なる可能性があります.
今後,glymphatic systemの評価指標が,ALSの診断バイオマーカーや治療標的に応用できるか検討されるものと思われます.またglymphatic systemは睡眠と密接な関連がありますので,ALSにおける睡眠障害が影響しているか,今後明らかにする必要があると思いました.もしかしたらALSにおける睡眠の改善が治療になるということもあるかもしれません.
Sharkey RJ, et al. Longitudinal analysis of glymphatic function in amyotrophic lateral sclerosis and primary lateral sclerosis. Brain. 2024 Dec 3;147(12):4026-4032.(doi.org/10.1093/brain/awae288
2-2-8)AIモデルに「認知機能検査」をして分かったその弱点@BMJクリスマス論文より
**岐阜大学医学部の下畑先生の2024年12月24日のFB投稿です**
世界五大医学誌の一つBMJ誌は,毎年,クリスマスの時期になるとイグノーベル賞を凌駕するような面白論文の特集号を公開します.今年の原著論文は4つで,変形性手関節症患者の手指機能に対する電気加熱ミトンの効果を調べた論文や,タクシー運転手と救急車運転手におけるアルツハイマー病による死亡率を分析した論文などが報告されていますが,個人的に面白かったのは,今年急速に広まった大規模言語モデルであるChatGPT(OpenAI開発),Claude(Anthropic開発),そしてGemini(Alphabet開発)の「認知機能」を人間と同じようにテストした研究です.エルサレムにあるハダサ医療センターの脳神経内科チームが中心に行ったものです.
施行したのは軽度認知障害(MCI)の診断のために作られた「MoCA(Montreal Cognitive Assessment)」という認知機能検査です.視空間・遂行機能,命名,記憶,注意力,復唱,語想起,抽象概念,遅延再生,見当識などを評価します.所要時間は約10分です.
さて結果ですが,ChatGPT 4oが最高スコアの26点を獲得し,ClaudeとChatGPT 4が25点,Gemini 1.5が22点,そしてGemini 1.0が16点という結果でした.MoCAテストの基準では30点中26点以上が正常範囲とされるため,大半のモデルが軽度認知障害(MCI)に該当するスコアであることが分かりました.とくに興味深いのは,抽象化や言語課題など,テキストベースの領域では高い成績を収めた一方,すべてのモデルが視空間および遂行機能において低いパフォーマンスを示したことです.例えば,図1は視覚的な注意機能を評価するトレイル・メイキングB課題(経路描画課題)を行っていますがいずれも不正解です.立方体の模写もかなり苦戦しています.ChatGPT 4oはASCIIアートを用いることで正確な図を描くことに成功しています.
印象的なのは図2の時計描画タスクで,数字を正しく配置できなかったり,時刻を正確に示せなかったりと,人間の認知症患者に似たエラーが見られました.ChatGPT 4oは写真のように美しい時計を描きましたが,針の位置を間違えました.Gemini 1.5が描いた時計(E)を著者は「アボカドのような形」と評していますが,ユニークで笑いを誘う一方,アルツハイマー病患者の特徴的な描画に類似しています.AIの課題を浮き彫りにするものです.
以上の結果は,AIが医療分野でどの程度人間の役割を代替できるのかを考える上で重要な示唆を与えます. 大規模言語モデルは高度な認知能力を持ちながらも,視空間認知や遂行機能において人間の医師を完全に代替するには至らないことを示しています.医療分野におけるAIの活用が急速に進む中,AIにはなかなか敵わないという雰囲気があったので,まだまだ人間も捨てたものではないという気持ちになりましたが, AIのこの弱点も早晩,改良されそうな気もしています.
Dayan R, Uliel B, Koplewitz G. Age against the machine-susceptibility of large language models to cognitive impairment: cross sectional analysis. BMJ. 2024 Dec 19;387:e081948.(doi.org/10.1136/bmj-2024-081948)
関連情報
岐阜大学医学部下畑先生は最新の医学情報を活発に発信されています。前月中のFB投稿については『2024年11月のニュース』をご覧下さい。
(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)