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ALS Long COVID パーキンソン病 認知症予防

2024年8月のニュース

残暑時には、冷房の効いた室内で、最新の医学情報を入手しては如何でしょうか?種々の感染症が認知症の発症と関連するようですし、ALSに対するブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)技術も発展しています。今月も岐阜大学の下畑先生が発信された最新医学情報の数々をお届けします。

Ⅰ、2024年8月の活動状況
名古屋フィジカル・フィットネス・センターさんの投稿
昨日は、愛知県は大口町にお邪魔しまして、午前、午後で1講座ずつの講師を務めてまいりました。 大口町保健センターさんが主催しました「健康推進員研修会」でした。 各講座、20〜30名の皆さんに参加いただきました。 こちらの講座は昨年の12月にも開催しており、昨日は半年ぶりの再会となりました。 町民の皆さんで、健康推進員として、各地域で住民の皆さんを対象として各種の健康づくり事業活動を展開されている皆さんです。 この大口町は3万人ほどの町で、やはり高齢化が進んでいる町ですが、横のつながりが高い地域で、こうした住民の皆さんによるボランティア活動は積極的に行われています。 私はこの大口町さんとはぼちぼち20年近いおつきあいになります。 その中で、生活習慣病予防をはじめ、特定保健指導、ポールウォーキング講座などを担当させていただき、昨年度からは3年間に及ぶ健康づくり推進員の任命を受けたり、本年度は委託事業もやらせていただく予定です。 こうして、住民の皆さんの健康づくりの一端を担わせていただけることに大きなやりがいを感じております。 大切なことは、こちらからの一方通行的な情報提供にとどまることなく、住民の皆さんがインプットされた後に、アウトプットする時に支援させていただくこと! コロナの影響を長らく受けた自治体の事業ですが、ようやく本年度からほぼ正常に戻った感じがします。 まだ反応が鈍い印象を受けますが、1人でも多くの住民の皆さんが「参加したい!」と思っていただける講座を展開し、フィットネスの輪を広げていくことに燃えています❗️😊

田村 芙美子さんの投稿
おはようございます 東京渋谷です 珍しく誰もいないので8月のハチ公 を撮っていると 国籍不明の女性が肩をたたき ワン、ワンと話しかけてきました   U^q^U   WAN?   ん? ハチ公と一緒に写真を撮りましょうか、と言ってくれたようです take oneね 振り返るといつの間にか記念写真を撮るための行列ができていましたwww これから介護予防PW教室です 先週は定員15名全員出席でしたが、今日はどうでしょう 施設の階段をお借りして階段・坂道昇降練習の予定です

田村 芙美子さんの投稿
🪷かまくら ポールウォーキング体験会 8/27or 9/5  手にした2本のポール(杖・ストック)を身体の前におきながら歩きます 4本脚になり安定します ・最近足(膝)腰の調子がよくなくて気になる方 ・転ぶのが不安で外歩きを躊躇っていらっしゃる方 ・もっとよい姿勢で歩幅広く(お棺の中まで)自力で歩けるようになりたい方 ・人生の楽しみを叶えるにはまずは自立して歩けること これがはじめの一歩 そんな歩きに応えてくれるポールウォーキングの体験会です  鎌倉市民65才以上の方! 体験して続けたいと思われたら、市内サークルをご紹介します  お申し込みは包括支援センター聖テレジア(写真下部)

新井 恵さんの投稿
今年もスマイルチームで救急法講習会開催しました 毎年8月4日前後の日程で行っています #松田直樹を忘れない #あっぱくん #スマイルチーム #日本赤十字社

田村 芙美子さんの投稿
秋ですね。 今日はスマホ不携帯で渋谷教室。来週はお盆休みなので初7秒スクワットを宿題に。ポールではなくボールでも遊びました。 横浜新道が異常に渋滞🚗🚗🚗⚡したのは何かあったのでしょうか。こんな時地震が来たら怖い!と思いました。まだまだ暑いですが大巧寺は秋の気配です。

校條 諭さんの投稿
何十年ぶりかのボウリング 8月の気まポ(気ままにポール歩き)は、外歩きを避けてボウリング“体験会”としました。 みんな、何十年か前にはやったことがあるけど・・・という状態で、投げ始めは9人のうち5人がガーターを出しましたが、だんだん慣れてきて、ストライクもポツポツ出るようになり、おおいに盛り上がりました。 体の動かし方や筋肉の使い方がいつもと違うので、もしかしたら少々筋肉痛が出るかも・・・。 会場はJR中央線荻窪駅のすぐそばの「荻窪ボウル」。土日も含め、午前は1ゲーム550円と手頃です。貸靴代400円。 2ゲーム楽しんで、近所の台湾料理店でカンパイしました。 (メンバー撮影の写真もお借りしました。)

台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
夏夜微風,揪團健走快閃活動✌️ 來到動物園,來給動物看🤣🤣 聽導覽介紹非洲象(長鼻象),大人小孩都覺得新奇有趣,好熱鬧! 祝動物園110週年快樂😁

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 台風一過/お盆休暇も最終日〜 〜PW散策/里山/虚空蔵山巡り〜‼️ 木々の木陰を選んでのいつものショートコース/3.5kmを48名の参加者無事完歩〜❗️ 佐久市広報10月号用取材でカメラマンも入りの緊張?した散策でした〜ww

とちぎポールウォーキング会さんと、Masami Yamagataさんの投稿の投稿
・ヤクルト御本丸体験定例会
・ポールウォーキングコーチの皆様・定例会参加の皆様 暑中お見舞い申し上げます。まだまだ暑い日が続きますがヤクルト御本丸カフェ&ギャラリーにてポールウォーキング体験定例会開催します。
室内ストレッチで体をほぐし終了後ヤクルトアイスで語らいましょう。お友達もお誘いください。

田村 芙美子さんの投稿
午前中は材木座の長勝寺へ 午後から腰越なごやかセンターでポールウォーキング貯筋クラス 暑さに負けない元気なシニアの皆さんと7秒スクワットのあとはポールゲームでリラックス🎶 大きな声で良く笑いました。これが元気パワーのもとかも。

杉浦 伸郎さんの投稿
東京都北区での ポールdeウォークセッション。 毎回、シニアの皆さんの「フレイルなんて言わせないわよ!」的意気込みを感じ手応えバッチリです。 隙間時間にかつての勤務地サンシャインシティ界隈を散策。随分様子が変わりましたね。相変わらず多くの若者で賑わっていて一安心しました。

長谷川 弘道さんの投稿
昨日、無事3回連続講座「いつでも、どこでも、誰でも、すぐにできる運動指導法」を終えることができました。 ご参加いただきました皆さん、ありがとうございました。 6月から毎月1回開催してまいりました。 これまでは、保健センターや生涯学習センター、子育て支援センターなどの自治体さんや、学校関係団体、福祉関連団体、一般企業などからお声をかけていただいて講師を務めてまいりましたが、今回は私としましては、初の主催講座でした。 募集から集金、当日の運営も全て自力ですよね。 今回はたとえ1人でも参加いただければ開催する思いで準備をしてきました。 今回は4名の皆さんのご参加いただきました。これまで関わらせていただきました自治体関係の皆さんや、トレーナー仲間や、その方からのご紹介いただいたりしてご参加いただいた皆さんでした。 自分1人の力ではできないことも、仲間の力があれば切り開けていけることを実感いたしました。 大事なことはこれを続けていくことです。 色々と改善するところもあります。 参加者の皆さんからのご意見も踏まえまして、後期に向けてまた企画してまいります。 開催の折には、ぜひみなさまご参加ください。 #運動指導法講座 #いつでもどこでも誰でもすぐにできる #保健師 #管理栄養士 #高齢者運動指導

田村 芙美子さんの投稿
~PW体験会その①~ 包括支援センターテレジア1、2 主催でポールウォーキング体験会の一回目を開催。早朝 滝のような雨音にあらあら今日は中止にするかな、とまたウトウト。次に目が覚めたときはなんとすっかり雨は上がり青空に。横の繋がりの濃い4サークル+北鎌倉紹介で お手伝いに各メンバーさんも駆けつけてくれ、さらに包括から4人もいらして会場設置やチラシも全て用意してくださいました。最初は澄まし顔だったみなさんは、顎の筋肉使いましょ!と声をだしてカウントを始めると、ぐっと活気が出て来ました。ポールの長さ合わせからストレッチ・筋トレ、インターバルウォーキングまで1時間半は楽しくあっという間。病気予防の歩き方 中之条研究の話まで。 健康の先にある楽しみ・幸せ💕のために運動を習慣化しましょう!に皆さん合点! 次回は9/5です。市民、初心者限定。

田村 芙美子さんの投稿
一昨日のPWの体験会の記事を見つけました! 前を見る!が浸透していなかった写真にショック😱 最初から完璧は求めません!楽しさが一番ですね。

 

来月以降の開催
台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
2024健走杖輕旅行 【2024健走杖健康活力輕旅行】即將開始🔥 第一站 ✅9/7(六) 13:30-16:00 地點:烏來內洞森林遊樂區🌲 站長:林柏樺站長 打卡活動:https://reurl.cc/ReOGRn 歡迎各地喜愛健走的好朋友們, 共同來參與活動~ 持續追蹤粉專跟line@公告, 今年結合健康科技的joiisport app, 加入📱打卡記錄、蒐集獎章🎖️等增加活動趣味性, 凡走過必留下痕跡! 📍「2024健走杖.健康活力輕旅行」報名表:https://reurl.cc/zDr9XQ #2024健走杖健康活力輕旅行 _________________________________ 🔥【2024健走杖健康活力輕旅行】預告🔥 目前每站健走時間 ✅9/7(六) 13:30-16:00 地點:烏來內洞 森林遊樂區。 站長:林柏樺站長。 ✅9/14(六) 1 or 2 D 地點:宜蘭頭城農場 。 站長:余秋月。 ✅10/13(日) 上午 地點:嘉義公園+樹木園健走,下午可以交流分享。 站長:龔鈴智。 ✅10/18(五) 地點:新北林口民視健走+參訪。 站長:林香蘭。 ✅10/27(日) 上午 地點:未定。 站長:陳秀玲。 ✅11/19(二) 上午 地點:新竹18尖山+下午 17公里海岸 。 站長:郭玟伶。 ✅11/29(五) 下午 地點:南化玉山樂活輕旅行。 住宿:台南市(晚間有有頌缽療癒) 11/30(六) 上午 府城月老桃花滿滿輕旅行。 站長:李端木(宗翰)。 ✅12/7(六) 上午 地點:桃園平鎮站輕旅行 站長:蘇雍賀。 ✅12/8(日) 上午 地點:台中潭雅神綠園道 站長:許秀貞站長。 ✅12/7(六) 上午 地點:彰化天空步道/八卦山/扇形車庫健走杖輕旅行 站長:鄭美金站長。 陸續更新中~ ✨持續追蹤粉專跟line@公告✨

みんなの元気学校さんの投稿
津田公民館 健康づくり講座 初めてでも楽しめるポールウォーキング|東京都小平市公式ホームページ

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 〜佐久ぴんころ ウォーク〜 コロナでの中止後満を時して開催〜 9/21(土)9kmと5kmのコースを用意し、協会コーチ等もお迎えしていますので〜❗️ 「プルーン生食食べ放題」 「ジャガイモのふるまい」 「甘酒ふるまい」 「無料健康相談」〜等 内容濃い佐久の 〜食べて歩いて健康長寿〜を楽しみに〜‼️

遠藤 恵子さんの投稿
資格取得セミナー

堀 和夫さんの投稿
2024 第3回中山道 馬籠宿夜明け前ウォーキングを11月10日に開催します。 今年も参加賞はTシャツだ。どっど〜ん❗️と太っ腹だね。

 

Ⅱ.関連学術ニュース
8月も、積極的に情報を発信されている岐阜大学下畑先生からの最新医学情報です。

1.認知症
1-1)「エビデンスに基づいた認知症予防2024」を学ぼう!広めよう!
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月6日のFB投稿です**
Lancet認知症委員会は定期的にエビデンスに基づいた認知症予防についての情報を報告していますが,前回の2020年の報告に最近の4年間の系統的レビューやメタ解析論文を追加して改訂がなされました(認知症に対する聴力障害とうつ病のリスクに関するメタ解析が完了されています).以下,2024年報告の要点です.
◆ 2つの新しい修正可能なリスク因子が追加され,リスク因子は14個になった.
2020年版の12のリスク因子(教育の不足,頭部外傷,身体活動の欠如,喫煙,過度の飲酒,高血圧,肥満,糖尿病,聴覚喪失,うつ病,社会的接触の欠如,大気汚染)に,視力低下と高LDLコレステロール血症が追加されました.ちなみに図は年代別のリスク因子と,修正によるリスク減少の程度を示しています.中年期では難聴と高LDLコレステロール血症がともに7%と最大,高齢期では社会的接触の欠如が5%と最大です.
◆ 14のリスク因子の修正は認知症患者のほぼ半数を予防または遅延させる可能性がある.
このため積極的な認知症予防を行う必要があります.これには国家的・国際的なレベルでの政策変更と個人の介入が含まれます.認知症リスクを減少させる行動は早期から開始し,生涯を通じて続けるべきと考えられます.各人が抱えるリスク因子は単一とは限らないため,予防は複数の因子に対して行う必要があります.
◆ リスク因子の修正はApoE遺伝子型に関係なく有効である.
アルツハイマー病の遺伝的要因としてApoE遺伝子e4アレルが知られていますが,その遺伝子型に関係なく,上述の14のリスク因子の修正は認知症予防に有用と考えられます.
◆ 生涯を通じて認知症リスクを減少させるための具体的な14の行動.
①教育の不足:すべての人に質の高い教育を提供し,認知機能を刺激する活動を奨励する.
②難聴:聴力障害のある人に補聴器の利用を可能にし,また聴力障害を減少させるために有害な騒音曝露を減少させる(例:ヘッドフォン難聴).
③うつ病:うつ病を効果的に治療する.
④頭部外傷:スポーツや自転車でヘルメットや頭部保護具の着用を奨励する.
⑤身体活動の欠如:スポーツや運動を推奨する.
⑥喫煙:教育,価格管理,公共の場での喫煙防止を通じて喫煙を減少させる.
⑦高血圧:高血圧を予防または軽減し,40歳から収縮期血圧を130 mmHg以下に維持する.
⑧高LDLコレステロール血症:中年期から検診を行い治療する.
⑨⑩肥満,糖尿病:健康的な体重を維持し,肥満があれば早期に治療する(糖尿病の予防にも役立つ).
⑪過度の飲酒:価格管理と過剰消費のリスクの理解を通してアルコール消費を減少させる.
⑫社会的接触の欠如:高齢者に優しいサポート環境と住居の提供.他者との共同生活を促進することにより社会的孤立を減少させる.
⑬視力低下:すべての人に視力低下のスクリーニングと治療を利用可能にする.
⑭大気汚染:大気汚染への曝露を減少させる.
◆難聴については,2020年版より大きく改訂されているので要点をまとめます.
・世界的に20%の人に難聴を認め,職業や騒音,未治療の中耳炎等が原因である.うち62%は50歳以上であり,しばしば難聴は治療されていない.
・難聴を認める場合,認めない人に比べて認知症のリスクが約37%高い.
・聴力が10 dB悪化するごとに認知症リスクが16%増加する.
・メカニズムとしては,社会的孤立,抑うつ,聴覚からの刺激の減少,聴覚のために多くの認知資源を必要とすることが挙げられている.
・米国の多施設で行われたACHIEVE研究では,特に認知症リスクが高い集団(高齢,喫煙率,教育水準,一人暮らし,糖尿病,高血圧等)にて,補聴器の使用が認知機能の低下を大幅に減少させることが示された.
・補聴器を使用する人は認知機能の低下リスクが約19%低い(ハザード比0.81)ことがメタ解析で示されている.
※この問題に関して「日本医学会連合TEAM事業セミナー 多領域の専門家が挑む加齢性難聴とその社会的課題 ― Healthy aging と認知症対策における聴こえの役割 ―」(主催:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会,共催:日本神経学会,日本言語聴覚士協会)を9月2日に東京で開催します(マスメデア向けです).私も「加齢性難聴と認知症」というテーマで講演します.みんなで啓発活動を行ってまいります.プレスリリースはこちらです.
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000057512.html
まとめ:認知症はアルツハイマー病だけが原因ではありません.上述のリスク因子の修正はアルツハイマー病以外の認知症にも有効と考えられます.高額な予防薬も選択肢の1つですが,その効果の程度や安全性,費用対効果を考えると,まずは個人でも国家レベルでも14のリスク因子に対する取り組みを始めることが大切だと思います.あと今回は間に合いませんでしたが,睡眠障害とコロナ感染も将来追加されると思います.
Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024 Jul 30:S0140-6736(24)01296-0.
https://www.thelancet.com/…/dementia-prevention…

1-2)感染症が認知症を引き起こすメカニズム
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月18日のFB投稿です**
感染症がアルツハイマー病などの認知症の発症と関連することが注目されていますが,そのメカニズムは不明です.最新号のNature Aging誌に以下を示した研究が報告されています.
◆感染症ごとに特定の部位に脳体積の減少が生じること
◆その脳体積の減少は認知症リスクと関連すること
◆感染症ごとの免疫プロテオームの変化,遺伝的素因が認知症に関連すること
対象は主に英国UK Biobank(49万5896人)とフィンランドの複数のコホート(FPS,HeSSup,STW)(27万3132人)のデータが使用されました.脳画像データはボルチモア長寿研究(BLSA)から得られたもので,特定の感染症が脳体積に与える影響を平均5.3年追跡し,平均3.4回のMRIを施行しました.対象となる感染症は6種類で,インフルエンザ,ヘルペスウイルス,その他のウイルス感染症,上気道感染症(URTI),下気道感染症(LRTI),皮膚・皮下感染症です.COVID-19は含まれていません.
【脳の体積と認知機能への影響】
特に側頭葉の灰白質および白質領域において,脳体積の減少を加速させることが確認されました(図1).
①インフルエンザ:側頭葉および後頭葉の灰白質の体積減少
②ヘルペスウイルス(HHV):側頭葉の白質の体積の減少
③種々のウイルス感染症:側頭葉の灰白質の体積の減少
④上気道感染症(URTI):側頭葉全体の体積減少
⑤下気道感染症(LRTI):側頭葉の白質と後頭葉の灰白質および白質の体積減少
⑥皮膚・皮下感染症:側頭葉および後頭葉の灰白質の体積減少
またいずれの感染症も,認知症リスクを増加させました(図2).とくに血管性認知症との関連が強く,ついで認知症(全原因),アルツハイマー病のリスクが増加しました.これらの感染症が脳の血管系に対して影響を及ぼし,血管性病変(BBB破綻)を通じて認知症リスクを高める可能性を示唆しています.さらに全身性の感染症では認知症リスクが高いことが示唆されました.
【プロテオミクス分析による関連するタンパク質と遺伝学的素因】
プロテオミクス分析ではそれぞれの感染症に特徴的なプロテオームの変化が認められました.
①インフルエンザ:MME(ネプリライシン),DEFB4A,RAG1など
MMEはアミロイドβの分解酵素で,その発現低下はアミロイドβの蓄積を引き起こす.DEFB4AやRAG1は免疫応答に関連し,その活性化は神経炎症を促進する.
②ヘルペスウイルス(HHVs): TREM2,GFAP,NfLなど
TREM2はミクログリアにおける重要な受容体である.TREM2増加は過剰なミクログリア活性化を引き起こし,神経炎症を促進する.GFAPやNfLは神経損傷の指標である.
③下気道感染症(LRTIs):MASP1,ITGB6,PACSIN2など
MASP1は補体系の活性化に関与し,炎症反応を強化する.ITGB6は細胞接着に関連するタンパク質で,炎症応答の制御に関与する.PACSIN2は神経細胞におけるシグナル伝達に関与する.
④上気道感染症(URTIs):IFIT3,FOXP3など
IFIT3はウイルス感染に応答する抗ウイルスタンパク質で,強力な免疫応答が引き起こされる.FOXP3は免疫抑制に関与するタンパク質.
⑤複数の感染症に共通するタンパク質:260種類のタンパク質が少なくとも1つの感染症と関連し,うちの35種類が脳体積の変化と関連した.PIK3CG,PACSIN2,PRKCBなどが含まれており,これらは認知機能低下やアルツハイマー病の血漿バイオマーカー(Aβ42/40比,GFAP,NfL,pTau-181)とも関連した.
またITGB6とTLR5の遺伝子変異は,それぞれ側頭灰白質および全脳体積の減少と関連していました.
【病態機序モデル】
感染後に血漿中で発現が増加した病原性タンパク質(pathogenic proteins)と,減少した保護性タンパク質(protective proteins)が特定されました(図3).これらのタンパク質の変化が,免疫プロテオームの変化,血液脳関門の破壊,遺伝的要因,アルツハイマー病関連タンパクへの影響を介して,脳の萎縮や認知機能の低下に寄与する可能性が示されました.
この研究はおそらくUKバイオバンク研究で,COVID-19が脳萎縮をもたらし認知症を招くことがきっかけとなり,その他の感染症ではどうなるかを検討したものと思います.そして世界中の最善と考えられるデータ・サンプルを駆使して明確な結論を導いた点に研究の凄みを感じました.
Duggan MR, et al. Proteomics identifies potential immunological drivers of postinfection brain atrophy and cognitive decline. Nat Aging. 2024 Aug 14.(doi.org/10.1038/s43587-024-00682-4)

1-3)アミロイドβが認知症を来すメカニズム ―新たなアルツハイマー病の治療標的IDO1―
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月30日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)において脳内に蓄積するアミロイドβがなぜ最終的に認知症を来すのかいくつかの仮説はあるもののよく分かっていませんでした.非常に興味深い研究がスタンフォード大学からScience誌に報告されました.この研究では,記憶を司る海馬におけるグルコース代謝に注目しました.具体的には,インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)という酵素に着目しています.IDO1はトリプトファン(TRP)をキヌレニン(KYN)に変換する際の律速酵素です.このKYNはアリールハイドロカーボン受容体(AhR)との相互作用を通じて,炎症や腫瘍において免疫抑制を引き起こす代謝物だそうですが,同時に「アストロサイトにおける糖代謝を抑制する作用」があります.アストロサイトは通常,解糖系により,ニューロンにエネルギーを供給するための乳酸を生成し,ニューロンのシナプス活動を支えていますが,KYNがこれを抑制してしまうことを示しています.
研究ではまずマウスおよびヒトiPSC由来のアストロサイトを用いて,アミロイドβやタウオリゴマーがアストロサイトのIDO1を活性化し,KYNの生成を増加させることで解糖系と乳酸生成を抑制し,ニューロンへのエネルギー供給が妨げられることが示しています.
★アミロイドβ・タウ → アストロサイトのIDO1↑ → KYN↑ → 解糖系(乳酸)↓ → ニューロンへのエネルギー供給↓
つぎにこの系においてIDO1阻害剤がこれらのプロセスを回復することを示しています.さらにマウスモデルを用いて,IDO1を阻害することで,海馬のグルコース代謝が改善され,ニューロンへのエネルギー供給が増加し,その結果,長期増強(LTP)と呼ばれるシナプス可塑性が回復することを示しています.LTPは学習や記憶の基盤となる神経回路の強化を意味します.
図左は,健常な状態において,アストロサイトが解糖系を通じて乳酸を生成し,それをニューロンに供給することで,ニューロンのミトコンドリア呼吸とシナプス伝達がうまくいく様子を示しています.図中央はADで,アミロイドβやタウオリゴマーがアストロサイトのIDO1を活性化し,KYNの生成が増加し,AhRを介して解糖系を抑制し,乳酸が減少することを示しています.図右では,ADでもIDO1阻害剤によってKYNの生成が抑えられ,アストロサイトの解糖系が正常化し,ニューロンへの乳酸供給が回復する様子を示しています.
そうなると気になるのは臨床応用できるIDO1阻害剤があるかですが,現在がん治療薬として開発されている「PF06840003」という薬剤があるそうです.この薬剤がAD治療にrepositioningできる可能性があります.またAD以外の神経変性疾患でも栄養療法の有用性が報告されていますが,その背景にあるエネルギー障害に対してIDO1をターゲットとした治療戦略が有効であるかもしれません.今後,研究が拡大する可能性を感じました.
Minhas PS, et al. Restoring hippocampal glucose metabolism rescues cognition across Alzheimer’s disease pathologies. Science. 2024 Aug 23;385(6711):eabm6131.(doi.org/10.1126/science.abm6131)

2.新型コロナウイルス感染症COVID-19
2-1)新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(8月8日)
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月8日のFB投稿です**
今回のキーワードは,3年間の追跡調査で死亡率と後遺症発症リスクは低下したが,入院した重症患者では依然高値である,感染後1年間のPASC発生率は経過的に減少しているが,オミクロン期のワクチン接種者においても依然として高い,long COVIDを発症しやすく,回復しにくい9つの要因,long COVIDでは持続感染により,腸管や脊髄におけるT細胞の活性化が生じている,long COVIDに伴う認知機能低下と関連する要因は,急性期重症,6ヵ月時の認知機能障害,高血圧である,COVID-19は若年成人の難聴および突発性感音難聴のリスク因子である,です.
long COVIDに関する長期的な疫学データが複数報告されました.オミクロン期のワクチン接種者においても依然として高く,またよりlong COVIDを呈しやすい9つの要因も総説にまとめられています(3つ目の項目です).また高齢者のCOVID-19入院患者における認知症の発生率は2.5年後の時点で20%弱(!)とありますので,感染予防・重症化予防を心がける必要があります.
FBで読みにくい方はブログ(https://tinyurl.com/2cptxkc2)をご覧ください.
◆3年間の追跡調査で死亡率と後遺症発症リスクは低下したが,入院した重症患者では依然高値である.
PASC(=long COVID)の感染後2年を超える追跡データは限られている.米国から退役軍人省の健康記録を用いて,感染者13万5161人と対照520万6835人を3年間追跡したコホート研究である(オリジナルの武漢株が優位で,抗ウイルス薬やワクチンが開発されていなかった期間の感染者が登録された).非入院感染者では,死亡リスクの増加は感染1年後以降認めなくなった.PASC発症リスクも3年間で減少したが,それでも3年目には1,000人あたり9.6障害調整生存年(DALY*)に寄与した(*DALYは特定の疾病によって失われた健康な人生の年数を表す).DALYのうち,神経学的後遺症が非常に高い割合を占めていた(図1).
一方,入院した患者では死亡リスクは低下したものの,3年目においても有意に高いままであった(罹患率比:1.29).PASC発症リスクは3年間で低下したものの依然高く,1,000人当たり90.0 DALYであった.以上より感染後3年間の追跡調査において,死亡率およびPASC発症リスクは低下したものの,入院を要した重症患者では依然有意なままであった.おそらく体内の様々な部位でウイルスの複製が生じ,その結果,炎症と免疫反応が繰り返し活性化され,PASCの原因となる可能性があると推測している.
Cai M, et al. Three-year outcomes of post-acute sequelae of COVID-19. Nat Med. 2024 Jun;30(6):1564-1573.(doi.org/10.1038/s41591-024-02987-8)
◆感染後1年間のPASC発生率は経過的に減少しているが,オミクロン期のワクチン接種者においても依然として高い.
PASCの発生率がパンデミックの過程で変化したかを検討した研究が米国から報告された.退役軍人省の健康記録を用いて,感染者44万1583人と非感染者474万8504人において,プレデルタ期,デルタ期,オミクロン期における感染1年後のPASC累積発生率を推定した.結果としてワクチン未接種の感染者の累積発生率は,プレデルタ期で100人当たり10.42イベント,デルタ期で9.51イベント,オミクロン期で7.76イベントであった.ワクチン接種者の累積発生率は,デルタ期で100人当たり5.34イベント,オミクロン期で3.50イベントであった.ワクチン接種者はワクチン未接種者よりも1年後のPASCの累積発生率が低かった(デルタ期の差,-4.18イベント,オミクロン期の差,-4.26イベント)(図2). PASC発生数は,プレデルタ期とデルタ期を合わせたものより,オミクロン期の方が5.23減少していたが,その28.11%は時期に関連し(ウイルスの変化やその他の時間的影響)に起因し,71.89%はワクチンに起因していた.以上より,感染後1年間のPASCの累積発生率は,パンデミックの経過とともに減少したが,オミクロン期のワクチン接種者においても依然として高いことが分かった.
Xie Y, et al. Postacute Sequelae of SARS-CoV-2 Infection in the Pre-Delta, Delta, and Omicron Eras. N Engl J Med. 2024 Jul 17.(doi.org/10.1056/NEJMoa2403211)
◆long COVIDを発症しやすく,回復しにくい9つの要因.
long COVIDの臨床に関する総説がLancet誌に報告された.疫学に関して興味深い2つのFigureを紹介したい.Figure 1は英国における自己申告によるlong COVIDの推定有病率を示したもので,全体の有病率は1.8%.最も罹患が多い年齢層は35〜65歳.女性に多く,貧困の場合,より有病率が高くなる(5段階で1が最も貧困).「非労働力人口」と自己分類した人における有病率は5.7%で,就業能力に大きな影響を与えていることが分かる(図3).症状の持続期間については少なくとも1年間が71%,少なくとも2年間が51%,少なくとも3年間が31%であった.
Figure 2はlong COVIDのリスク因子をまとめたもので,発症しやすく,回復しにくい要因としては以下の9項目が記載されている.
①既往症あり,②女性,③貧困,④初期に多くの症状を呈した,⑤COVID-19感染時に重症(入院した),⑥ワクチン未接種または接種が不十分,⑦初期の感染時に休息がとれなかった,⑧初期の感染時に抗ウイルス薬が未投与,⑨再感染
Greenhalgh T, et al. Long COVID: a clinical update. Lancet. 2024 Jul 31:S0140-6736(24)01136-X.(doi.org/10.1016/S0140-6736(24)01136-X)
◆long COVIDでは持続感染により,腸管や脊髄におけるT細胞の活性化が生じている.
米国UCSFより,急性感染の27日後から910日後までの24人の患者において,活性化T細胞を選択的に標識するトレーサー [18F]F-AraGを用いたPETを施行した研究が報告された.結果として,これらの患者では症状の持続の有無にかかわらず,脳幹,脊髄,骨髄,鼻咽頭および肺門リンパ組織,心肺組織,腸壁などの多くの部位で,対照群と比較してトレーサーの取り込みが高かった.脊髄と腸壁におけるT細胞の活性化は,long COVID症状と関連していた(図4).さらに肺組織におけるトレーサー取り込みは,特に呼吸器症状が持続する患者で高かった.これらの組織におけるT細胞活性化の亢進は,long COVID症状を認めない参加者にも観察された.5人のlong Covid患者の大腸組織を入手し,SARS-CoV-2 RNAのin situハイブリダイゼーションと免疫組織化学的検索を行った.5人全員の直腸S状結腸固有層組織で細胞内にSARS-CoV-2一本鎖スパイク蛋白コードRNAが同定され,3人では初回感染から676日後まで二本鎖スパイク蛋白コードRNAが同定された.以上よりウイルスの持続感染が長期にわたる免疫学的障害と関連している可能性が示唆された.
Peluso MJ, et al. Tissue-based T cell activation and viral RNA persist for up to 2 years after SARS-CoV-2 infection. Sci Transl Med. 2024 Jul 3;16(754):eadk3295.(doi.org/10.1126/scitranslmed.adk3295)
◆long COVIDに伴う認知機能低下と関連する要因は,急性期重症,6ヵ月時の認知機能障害,高血圧である.
中国武漢でSARS-CoV-2オリジナル株に感染して生存した60歳以上の1245人と,感染していない配偶者358人を対象に,2年半にわたる認知機能の変化を調査した.高齢のCOVID-19生存者における認知機能障害の全発生率は,感染・入院後2.5年の時点で19.1%であった(Telephone Interview for Cognitive Status-40を用いて評価)(図5).認知機能の低下は,主に重症患者の感染後1年間で出現し,その後,低下率は軽減した.長期的な認知機能低下と関連する要因は,重症COVID-19,6ヵ月時の認知機能障害,高血圧であった.以上より,COVID-19サバイバーに対する感染後の認知機能のケアの重要性が示唆された.
Liu YH, et al. Tracking cognitive trajectories in older survivors of COVID-19 up to 2.5 years post-infection. Nat Aging (2024).(doi.org/10.1038/s43587-024-00667-3)
◆COVID-19は若年成人の難聴および突発性感音難聴のリスク因子である.
韓国から若年成人におけるCOVID-19と難聴/突発性感音難聴との関連を検討した全国住民ベースのコホート研究が報告された.合計671万6879人の若年成人が対象となった.4026万757人・月の追跡期間中に,3万8269例の難聴と5908例の突発性感音難聴を認めた.難聴のリスク(発生率:11.9対3.4/10,000人・月;調整サブ分布ハザード比(aSHR),3.44;P<0.0001)および突発性感音難聴のリスク(発生率:1.8対0.5/10,000PM;aSHR,3.52;P<0.0001)は,COVID-19群でより高かった.以上より,若年成人におけるCOVID-19後の難聴および突発性感音難聴のリスク上昇が示唆された.
Kim HJ, et al. Incidence of hearing loss following COVID-19 among young adults in South Korea: a nationwide cohort study. eClin Med. July 29, 2024(doi.org/10.1016/j.eclinm.2024.102759)

関連情報
・前回の「新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(6月23日)」は2024年7月のニュースに掲載しています。

3.パーキンソン病
3-1)パーキンソン病患者の認知症移行率は既報よりだいぶ低い
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月13日のFB投稿です**
パーキンソン病(PD)患者では最大80%で認知症が発症すると言われてきました.よく引用されるノルウェーの報告では8年間で78%,オーストラリアの報告では20年間で83%の発症率でした.しかしこれらは20年以上前に発表されたもので,かつ症例数も224人および136人と少ない報告でした.今回,Neurology誌に米国からPD患者の認知症リスクを検討した研究が報告されました.大規模前向き観察研究のPPMI(多施設共同国際研究)と,ペンシルバニア大学(Penn)のPD研究コホートのデータを用いています.
結果として,PPMIコホートでは,417人(平均年齢61.6歳,男性65%)が追跡され,罹病期間10年目の認知症推定確率は9%(治験担当医師の診断),15%(MoCA),12%(MDS-UPDRS Part I認知機能)と既報より低い確率でした.Pennコホートでは,389人(平均年齢69.3歳,男性67%)が追跡され,最終的に184人(コホートの47%)が認知症と診断されました.
図1は2つのコホートでPDの診断を受けてから認知症と診断されるまでの年数を示しています. PPMIコホートの認知症発症の累積確率は,観察期間全体を通じて50%を超えませんでした(よって認知症の診断の中央値不明).一方,Pennコホートでは,認知症の診断の中央値は15.2年で,認知症の推定確率は罹病期間10年で27%,15年で50%,20年で74%でした.
図2A-Cは認知症に影響を与える因子の検討です.56歳未満でPDと診断された者の中央値は19.4年,56〜70歳では14.6年,70歳以上では9.2年でした(p < 0.001).性別では女性で19.4年,男性で13.3年でした(p = 0.004).教育レベルでは,13年未満で11.6年,13年以上で15.2年でした(p = 0.006).よってPDの認知症発症リスクに影響を与える要因として,年齢が高いこと,男性であること,教育レベルが低いことが示されました.
以上より,PDにおける認知症の発生頻度は,既報よりも低く,かつ経過も遅いことが示唆されます.またPD患者における認知症予防に個別化された戦略が必要である可能性が示されました.
Gallagher J, et al. Long-Term Dementia Risk in Parkinson Disease. Neurology. 2024 Sep 10;103(5):e209699. (doi.org/10.1212/WNL.0000000000209699)

3-2)機能性運動障害に合併する疾患―頭痛とパーキンソン病に関する2つの論文―
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月6日のFB投稿です**
近年,欧米において機能性神経障害(functional neurological disorder; FND)の疾患概念が確立し,適切な診断および治療について盛んに検討が行われています.本邦でも,徐々にその理解が進んでいるものの十分とは言えず,その啓発は今後の重要な課題と言えます.FNDのひとつ,機能性運動異常症(functional movement disorder; FMD)に関して興味深い論文が2報ありましたのでご紹介します.
【その1.FMDでは頭痛を高率に合併し,合併のタイミングで特徴が異なる可能性がある】
FNDでは主症状以外に,疲労>記憶障害>頭痛>排尿障害といった関連症状を合併することが知られています(Eur J Neurol. 2021;28:3591-3602).FMDでも頭痛が頻繁に見られますが,その特徴を評価した研究はほとんどありません.スペインからFMDにおける頭痛の発生率,特徴,合併のタイミングを調べた観察コホート研究が報告されました.
結果はFMD患者51名のうち,40人(78%)が反復性の頭痛を呈していました.頭痛の強さは中等度から重度が多く(83%),約2/3は9日/月以上の頭痛を認めました.頭痛による障害の程度は高く,HIT-6中央値(四分位範囲)は62(49–66)でした.頭痛に伴う症状としては悪心・嘔吐,光過敏・音過敏,運動麻痺・不安定性,視覚症状,言語障害を認めました(図1).ICHD-3による診断は片頭痛または片頭痛疑い(probable migraine)が23人(58%),緊張型頭痛が11人(27%),新規発症持続性連日性頭痛(NDPH)が2人(5%),一次性運動時頭痛が1人(3%),分類不能が3人(7%)でした.頭痛の合併タイミングは,FMDの発症前が28人(70%),FMDの発症後が5人(12%),同時が6人(15%)でした.最後の群では,6人中4人(67%)が発症から連日の頭痛を訴え,2人はNDPHの基準を満たしていました.
以上より,頭痛はFMDにしばしば合併すること,また片頭痛や緊張型頭痛に加えて,NDPHが認められる可能性が示唆されました.興味深いのは,頭痛の特徴がFMDの発症前後,もしくは同時に始まるかで異なる可能性がある点です.同時発症はより重要なのかもしれません.いずれにせよFMDでは頭痛に注意し,認める場合は積極的に治療を行うこと,ならびに多数例での前向き研究を行うことが必要と考えられます.
Riva E, Kurtis MM, Valls A, Franch O, Pareés I. Beyond movement: Headache in patients with functional movement disorders. Headache. 2024 Aug 1.(doi.org/10.1111/head.14804)
【その2.FMDをパーキンソン病の新たな前駆症状と考えて検討すべきである】
FMDは他の神経変性疾患にも合併することがあり,特にパーキンソン病(PD)は有名です(アルツハイマー病やPSPでは稀です).最近のコホート研究や症例集積研究から,FMDがPDの診断に先行して認められることが注目されています.つまりFMDがPDの前駆症状である可能性があります.この現象をどう考えるべきか,英国のKailash Bhatia先生らが検討した総説がMov Disord誌に発表されています.
まずFMDがPDに先行する機序について3つの可能性を提示しています.
1.初期のPDをFMDと誤診している可能性
2.不安,うつ病,疲労,痛みなどのPDの非運動症状が,FNDにおいても共通のリスク因子として作用する可能性
3.早期の神経変性(特にドーパミン神経伝達の欠乏)がFMDをきたす可能性
とくに著者は3の可能性を考えておられるようです.図2はFMDとPDが共通する脳のネットワークや機能障害に関連している可能性を議論したものです.難しいのですが,具体的には運動生成の変化,運動の自動性の喪失,フィードフォワード運動信号と最終的な運動出力の感覚信号との間の不一致として理解されるエージェンシーの喪失,感情処理の障害が提示されています.
臨床的に必要なのは,FMDとPDの誤診を避けるために,①それぞれの陽性徴候を積極的にチェックすること(とくにFMDの陽性徴候をマスターすること),②レム睡眠行動障害,自律神経障害,嗅覚低下など,PDのその他の非運動症状をチェックすること,③発症早期では感度が低いDATスキャンに診断を依存することをやめること(DAT陰性=FMDではなくPDでもあり得るということです),が大切になります.
Matar E, et al. Functional Movement Disorder as a Prodromal Symptom of Parkinson’s Disease-Clinical and Pathophysiological Insights. Mov Disord. 2024 Aug 9.(doi.org/10.1002/mds.29958)

関連情報
・「パーキンソン病の硬膜外脊髄電気刺激療法(改訂版)」については、2023年11月のニュースで取り上げています。

4.ALSに対するブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)技術の発展・多様化と大きな意義と限界
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月20日のFB投稿です**
最新のNew Eng J Med誌にALSにおけるBCI技術に関する印象的な論文が3つ掲載されています.この治療は今後きわめて重要で,本邦でも脳外科,工学との連携を進め,極力早期に実現すべきと強く思いました.
【論文1.患者と家族へのインタビュー】
米国のALS患者さんとその家族がBCI技術を利用してコミュニケーションを回復する様子をインタビューとして聞くことができます.会話困難になった患者さんがBCI技術により取り戻した声を聞くことができます(むしろリスニングしやすいです).https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp2407613)
ご本人にとって言葉を失い,家族,とくに娘とのつながりを失うことが最も辛いことでした.孤立がストレスを増大させ,多くの問題を悪化させました.言語の喪失がALSの最も残酷な側面のひとつであると述べています.しかし再び自分の声でコミュニケーションを取れるようになり,日常生活が大きく改善しました.「自分らしさを取り戻し,家族や友人との深い会話ができるようになった.再び娘の父親になれたことに感謝している」と述べておられます.
Restoring Lost Speech: ITT Episode 36. N Engl J Med. 2024 Aug 15;391(7):e13.(doi.org/10.1056/NEJMp2407613)
【論文2.短期間に極めて高い精度で脳波から音声出力するBCI技術】
上記の患者さんが使用したBCI技術「音声ニューロプロステーシス(prosthesis:人工器官)」に関するカリフォルニア大学デービス校の研究です.患者の脳活動をリアルタイムで解読し,それをテキストに変換して音声出力する技術です.具体的には,患者の話そうとする意思を左中心前回に埋め込まれた256個の電極を介して脳波から解読し,これを使用して音声として出力します(図1, 2).以前,録音した患者の声を使ってかつての声のように発音することができます.移植のわずか25日後に99.6%の精度で音声に変換することができました.12万5000語の語彙を使用しても90.2%の精度を達成し,最終的には97.5%の精度で約8ヶ月間使用されました.この技術は,ALS患者のコミュニケーションを大きく改善し,日常生活での使用が可能であることが示されました.
Card NS, et al. An Accurate and Rapidly Calibrating Speech Neuroprosthesis. N Engl J Med. 2024 Aug 15;391(7):609-618.(doi.org/10.1056/NEJMoa2314132)
【論文3.6年間の長期使用が可能であったBCI技術】
研究に参加した時点で58歳のオランダのALS患者に対する埋め込み型BCIの長期経過を追跡した研究です.前述のBCI技術とは異なる方法で,脳の電気活動を利用してマウスクリックのようなコマンドを生成し,文字の選択や介護者の呼び出しなどを行う技術です.BCI技術の使用頻度は視線入力装置がうまく使えなくなったり,瞬目ができなくなってから増加し,日常生活で使用されました.導入の6年後から徐々に使用が減少しました(図3).最終的にBCIの制御の正確性が低下した7年目で使用は終了しました.その時点では大脳の神経信号の振幅が減少し,頭部CTでは進行性の萎縮を認めました.つまりBCI技術の使用には限界があることが明らかになりました.
Vansteensel MJ, et al. Longevity of a Brain-Computer Interface for Amyotrophic Lateral Sclerosis. N Engl J Med. 2024 Aug 15;391(7):619-626.(doi.org/10.1056/NEJMoa2314598)
【まとめ】
異なるタイプのBCI技術の使用事例が示されており,技術の多様性と進化が分かります.BCI技術が個々の患者さんのニーズや疾患の進行度に応じてさまざまな形で適応可能であることが示されたことになります.一方で,BCI技術には神経変性の大脳への波及という時間的な限界があることも示されました.しかし最初のインタビューが示すように,一定期間と言えども,患者さんが「自分らしさ」を取り戻し,家族や友人とコミュニケーションできる意義は極めて大きく,本邦でもBCI技術の実用化が進むことを強く期待したいと思います.

関連情報
・上記の論文2については、日経新聞が、2024年8月16日の朝刊で『米大学 ALS患者、家族と会話』と題する記事で紹介しています。

5.教育談義
5-1)脳神経内科医1年目の私のカルテに久しぶりに対面した話
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月7日のFB投稿です**
3年ほど前に,小脳失調症の研究でご一緒させていただいている信州大学中村勝哉先生から,信州大学で診療している患者さんの学会発表の共同演者になってほしいというお話をいただきました.症例は家族性痙性対麻痺SPG26の原因遺伝子であるB4GALNT1に新規ミスセンス変異があることが判明した44歳女性です.なぜ私が共同演者になるのか思い当たることがありませんでしたが,お話を伺うと,20歳時に信州大学に入院歴があり,そのカルテを調べたところ,なんと私の書いた入院サマリーが出てきて,これまでの経過を理解するのに役に立ったということでした.患者さんが17歳のときに,脳神経内科医1年目の私が新潟の市中病院で主治医となり,その後,長野県に転居されたということです.
中村先生が私にそのカルテを送ってくださり,27年前に書いたカルテと対面したわけですが,感想は「分からないなりに全力で取り組んでいる」と思いました.恥ずかしくもありましたが,教室の若い先生がたにも1年目の私のカルテを見てもらいました.彼らに伝えたかったことは,診断が分からない難しい症例を経験したときに「分からないながらもしっかりと病歴や神経所見を記載し,可能な限り勉強してベストの考察を残しておけば,いつか誰かが見て役に立つかもしれない」ということです.これまでも遺伝性神経疾患において同様の事例がいくつもありますし,おそらくこれから発見される未知の抗神経抗体を有する自己免疫性神経疾患でも同様のことが起こるだろうと思います.自戒の念を込めてですが,できるだけしっかりとしたカルテを残す必要性を改めて感じました.以下は最近発表された論文です.1症例報告でもここまで詳細な検討ができるのだと非常に感心し勉強になりました.中村先生,どうもありがとうございました!
Inamori E, Nakamura K, et al. Functional evaluation of novel variants of B4GALNT1 in a patient with hereditary spastic paraplegia and the general population. Front Neurosci. 31 July 2024. Vol18(doi.org/10.3389/fnins.2024.1437668)オープンアクセス

5-2)脳神経内科はcommon diseaseを診ているか?@Brain Nerve誌8月号
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月8日のFB投稿です**
標題の鼎談をさせていただいたBrain Nerve誌8月号が発刊されました.今月号の特集は「Common diseaseは神経学の主戦場である revisited」です.2013年9月号に「Common diseaseは神経学の主戦場である―現状と展望」という特集が組まれました.脳神経内科というと「難解で,治らない病気を診ている特殊な集団」というイメージを持たれている人もいるかもしれませんが,実は脳卒中,認知症,てんかん,頭痛,めまいといった,いわゆるcommon diseaseを最も多く診ている,あるいは診ることを期待されている診療科でもあります.この特集号ではこれらの多数の患者さんを実際にどの診療科が引き受けているのか,診療が不十分な原因は何か,脳神経内科が解決すべき課題は何かなどを議論しています.日本神経学会では西山和利代表理事が中心となり,common diseaseの診療レベルの向上を目指し,特別教育研修会(脳卒中・てんかん・頭痛・認知症コース)などの取り組みを行っていますが,前回の特集号から10年が経過してどのような状況になっているかを編集委員の3名が議論いたしました.
鼎談は興味深い内容になったと思います.内容は小見出しを並べると「脳神経内科への名称変更とその影響,Common disease の診療をめぐる現状,脳神経内科医が果たすべき役割と課題,脳神経内科のおもしろさを伝えていく,脳神経内科と他科との壁を壊して歩もう」となっています.また総説も下記のように力作ぞろいで,とても勉強になります.ぜひご一読いただければと思います.
◆【鼎談】脳神経内科はcommon diseaseを診ているか? 下畑享良×髙尾昌樹×神田 隆
◆認知症診療における脳神経内科医の役割(森 悦朗)
◆脳卒中の現場における脳神経内科医の存在意義(出口一郎,髙尾昌樹)
◆てんかん診療の進歩と課題(赤松直樹)
◆頭痛診療の進歩と今後の展望(永田栄一郎)
◆Common diseaseとしてのめまい──危険度で考える(福武敏夫)
◆末梢神経障害(しびれ)──神経・筋疾患の「総合診療科」としての役割(古賀道明)
Brain Nerve誌HP
https://www.igaku-shoin.co.jp/journal/detail/41128
第8回特別教育研修会(2024年10月6日(日))
https://8neurology-kensyu2024.org/index.html

5-3)河井継之助と山本五十六のことばと教育の大切さ
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月11日のFB投稿です**
夏休みを自宅のある新潟で過ごしました.長岡市にある河井継之助記念館と山本五十六記念館を訪ねました.河井継之助(1827-1868)は幕末の越後長岡藩の家老で,戊辰戦争では長岡藩を率いました.山本五十六(1884-1943)は太平洋戦争時の連合艦隊司令長官で,真珠湾攻撃をはじめとする多くの作戦を指揮しました.長岡市が生んだふたりの共通点は,最後まで戦争に反対しながらも,戦争の旗頭に立たざるを得なかったことかと思います.
今回,記念館を訪問して,さらに共通点に気づきました.それは教育です.継之助は藩校に通い,江戸や西国,長崎にも遊学して新しい価値観を身に着けましたし,五十六は海軍兵学校を卒業,アメリカへの留学経験を持ち,多くの外国を巡って国際的な視野を身につけました.これらの基盤があるからこそ,時代の変化を理解し,新しい方法を取り入れる姿勢を持てたのだと思います.そしてともに現代にも通用する箴言を残しています.それぞれのことばをまとめた2冊の本を読みました.そのなかから印象に残ったことばをご紹介します.
【河井継之助のことば(https://amzn.to/4fGM88L)】
◆何でもよい,一つ上手であればよいものだ.上手だければ,名人と謂はれる.是からは何か一つ覚えて居(お)らなければならぬ.→ 教室で私がいつも言っていることと一緒です.
◆眼を開け,耳を開かなければ,何事も行はれぬ.
◆学問というものは実行しなければ何の役にも立たないものである.
◆使ふものも使はるるものも,互に愉快に仕事を為(す)る.
◆人間はどんなに偉くとも,人情に通ぜず,血と涙がなくては駄目だ.
【山本五十六のことば(https://amzn.to/3SKDoVj)】
◆やってみせ,言って聞かせて,させてみせ,ほめてやらねば,人は動かじ.話し合い,耳を傾け,承認し,任せてやらねば,人は育たず.やっている,姿を感謝で見守って,信頼せねば,人は実らず. → 教室のリーダーシップ講義で紹介してる言葉ですが,全文を知ってほしいです.
◆中才は肩書によって現はれ,大才は肩書を邪魔にし,小才は肩書を汚す.
◆人は誰でも負い目を持っている.それを克服しようとして進歩するものなのだ.
◆もらった恩は岩に刻め,与えた恩は水に流すべし.
ちなみに写真2枚目の「常在戦場(常に戦場に在り)」は長岡藩士にとっての精神規範で,ふたりとも「常在戦場」の書を残していました.この意味は,戦場の生活を予測し,平素から質素倹約をし,心身の鍛錬をして教養を向上させるというものです.幕末に長岡藩が苦難に陥った際,継之助とともに長岡維新三傑と呼ばれた小林虎三郎は,三根山藩から見舞いとして送られた米百俵を藩士らに分配せず,国漢学校設立資金の一部に充て,人材育成を呼びかけました(有名な「米百俵」の故事です).
数日前の朝日新聞の記事に「科学論文,日本は過去最低の13位」とありました.しかし日本人がダメになったのではなく,国家として教育が十分できていない結果なのだろうと思いました.パリオリンピックの日本人選手の大活躍を見ると,若いうちからしっかり教育をすれば世界に通用できることが示されているように思います.
河井継之助記念館(https://tsuginosuke.net/)
山本五十六記念館(http://yamamoto-isoroku.com/)

5-4)初めて知ることばかりで衝撃を受けた「原爆裁判―アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子」
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月16日のFB投稿です**
久しぶりにNHK朝ドラを見ています.『虎に翼』です.今週,主人公の寅子が「原爆裁判」に関わる場面が描かれていますが,しばらく前に書店で標題の本(https://amzn.to/4fWyzT4)を見つけました.寅子のモデルである三淵嘉子さんは第1回の口頭弁論から結審に至るまでの8年間,審理を担当しました.本の最後に判決文全文がありますが,そのなかで「原爆投下は国際法違反」と明言,さらに「政治の貧困を嘆かずにはおられない」と日本政府を批判し,被爆者への支援策を強く促しました.いまだロシアがウクライナへの侵攻で核兵器の使用をちらつかせる状況ですので,核兵器の使用が国際法に違反すると明確に述べた判決が持つ意義は現代においても大きいと思います.
また右図は中国新聞(2024年5月1日)からの引用で,原爆裁判の争点を示していますが,国は被害者よりも米国に寄り添う主張を行ったことがよく分かり驚きました.
https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=141335
ただ本書は判決文を除くと裁判に関する記載は少なめで,むしろ卓越しているのは,原爆開発の経緯,原爆投下の判断,原爆投下後の米国の対応について関係者の発言を集めて記載した前半部分です.初めて知ることばかりでした.本書の記載がすべて正しいかは分かりませんが,下記の発言を読むと,本当に残念だという思いがこみ上げてきましたし,原爆投下後の政治による科学の蹂躙にいろいろ考えさせられました.核軍縮・核廃絶のために日本人の果たす役割は大きいと終戦記念日に改めて思いました.おすすめの本です.
◆アメリカ科学研究開発局長官ヴァネヴァー・ブッシュと米国防研究委員会科学・爆発物部門主任のジェームズ・コナントは「原爆の最初の使用は,敵国の領土ではなくわが国で行なうのがベストです.日本が降伏しなければ,原爆が日本の領土で使われることになると警告すればよい」と提案した.
◆第34代大統領となるドワイト・D・アイゼンハワー元帥は,「対日戦にはもはや原子爆弾は不要である」と(原爆投下の決断をした第33代大統領の)トルーマンに進言している.
◆アメリカのABCテレビは1995 年に「ヒロシマ・なぜ原爆は投下されたのか」という番組を放送し,以下のような見解を示した.「太平洋戦争末期の日本に原爆投下か本土上陸作戦しか選択肢がなかった,というのは歴史的事実ではない」
◆(第31代大統領の)ハーバート・フーバーは,「いかなる詭弁を用いようと,原爆投下の主目的が,戦闘員ではなく女性子供老人などの非戦闘員の殺傷であったことを否定することはできない.そもそもアメリカは日本を挑発しなければ決して真珠湾を攻撃されることはなかっただろう」といっている.
◆ダグラス・マッカーサーは,「日本がソ連に和平仲介を頼んだと知った1945年6月,私は参謀たちに,戦争は終わりだ,と告げた.ところがワシントンのトルーマン政権は突如日本に原爆を投下した.私は投下のニュースを聞いて激怒した」と語っている.
◆(第33代大統領の)トルーマン大統領とバーンズ国務長官が,無警告で大都市への原爆投下を強行した理由は,「主に日本に対する人種的偏見と,真珠湾攻撃に対する懲罰である」と社会学者で公文書研究者の有馬哲夫氏は指摘している.
◆原爆開発責任者だったオッペンハイマー博士は,「原爆は地上600メートルという高い地点で爆発したため,放射性物質は成層圏まで到達している.それが地上に落ちてくるまでには極めて少量になる」という見解を述べ,「だから広島,長崎では人体に悪影響を及ぼす残留放射線は発生しない」と説明した.
◆「君たちの任務は『ヒロシマとナガサキには放射能がない』と証明することだ」(調査団の団長のマンハッタン計画のNo.2トーマス・ファレル)准将は開口一番,全員にそう伝えた.
◆(東京裁判の)パール判事は「(アメリカの)原爆使用を決定した政策こそが,ホロコーストに唯一比例する行為である」と論じ,原爆投下こそが無差別的破壊として,ナチスによるホロコーストに比べられる唯一のものである,としたのである.
原爆裁判―アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子(毎日ワンズ)
https://amzn.to/4fWyzT4

5-5)YouTube動画:Don’t give up hope!希望を捨てないで!
**岐阜大学医学部下畑教授の2024年8月20日のFB投稿です**
研究をする理由 ―若い研究者,医師,そして医学生にぜひ見ていただきたい動画―
私は大学院生時代に脊髄小脳変性症のひとつ,歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の研究を行っていました.その研究が新聞報道され,そのお蔭で何人ものDRPLA患者さんやご家族からご連絡や激励をいただきました.そのなかに塩沢淳子さんと娘さんのクリちゃんがいました.いまもSNSなどでやり取りをしておりますが,その塩沢さんから「先日,ハワイの医大生に話をしました.後半ドクターも話をしていて,下畑先生のリベラルアーツのに通じるものがあると感じました.是非後半だけでも見てください」というご連絡をいただきました.

YouTube動画:Don’t give up hope!希望を捨てないで!
https://www.youtube.com/watch?v=Phufk4O7uLc

塩沢さんと,脳神経内科医のKore Kai Liow先生(Hawaii Pacific Neuroscience)がとても大事なことを話しておられ,感動して目頭が熱くなりました.20分弱の動画で,前半はクリちゃんやご主人の病気のこと,そして後半が最新の治療研究についてになります.若い研究者,医師,そして医学生に見ていただきたいです.なぜ私たちが研究をするのか,その理由が分かります.そして最後に驚くような奇跡も起こります.

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)