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2025年1月のニュース

「ロボティクスに ChatGPT の時代が到来しつつある」(NVIDIA ジェンスン・フアン)。自動運転車 (AV) や ロボットなどのフィジカル AI システムの開発を促進するためのプラットフォーム『NVIDIA Cosmos™ 』が発表されました。

Cosmos™発表のニュース、ヒト型ロボット開発の最新潮流、岐阜大学医学部下畑先生からの最新医学情報をお届けします。

1.2025年1月の活動状況
佐藤 ヒロ子さんの投稿
#2025年初歩き #船橋ウォーキングソサイエティ 新年明けて4日目で もう活動開始です スッキリ&ニッコリ 今年も宜しくお願い致します   #2本のポールを使うウォーキング #海老川土曜日コース #松の内の定例会 #サーキットトレーニング #お正月太りは早めに解消 #お年賀タオル

佐藤 ヒロ子さんの投稿
#船橋ウォーキングソサイエティ  #シニアポールウォーキング  2025/1/6 「おめでとうございます」  と行き交う初顔合わせ   静かなやる気(長続きのコツ❤️)   のメンバーに    新入会員2名が加わりました #コグニサイズ #体幹バランス   頭の中から足先まで 今日もしっかり動かしました〜     #転倒予防 #認知症予防 #姿勢改善 #チェアエクササイズ #ストレッチ #筋トレ #ポールエクササイズ

田村 芙美子さんの投稿
1/06 飛翔 羽を拡げて少し遠くに翔びませんか。今年は秋田の佐々木奈々子さんのPW活動をサポートします。 肩甲骨から羽を拡げます。力まずそして少しずつ羽ばたいて~!🪽❤🛫 去年後半からの雑務を整理して自粛生活を少しずつ解禁。皆さんのパワーをください。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【チーム対抗じゃんけんゲーム】    #船橋ウォーキングソサイエティ   #美姿勢ウォーキング火曜日    2025/1/7   まだ松の内で長閑に  新年のご挨拶が交わされます #サーキットトレーニングはこの時期の定番メニューです  きっちりと励みました(笑)  火曜日は年賀タオルお渡しも ゲームに取り込んで渡すので    盛り上がります⤴  チーム対抗じゃんけん大会  何と優勝は私達のチーム    勝って笑顔    負けても笑顔    毎回 大笑いです

佐藤 ヒロ子さんの投稿
#船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #木曜日行田公園コース  お正月気分もすっかり   抜けての集合 90分あっという間終わりました

田村 芙美子さんの投稿
1/11 午後からは 大田区ポールdeウォーク体験会(@御園神社)のあと、皆さんと健康安心講座に参加(@カムカム新蒲田)・・・  喪中のため鳥居の脇からお邪魔し、境内でポール体操で身体を温め、脳トレで頭も準備運動をした後 意識して横断歩道の白帯は踏まず、歩幅を広げて講演会場までPWしました。 ・おしゃもじ社の謂れは? ・「後見人制度」は知っていましたが、「家族信託」は初めて知る制度でした。有意義な講演会に参加でき感謝です。

校條 諭さんの投稿
高円寺・阿佐ヶ谷南部の寺社をポール歩き 新年初の「気ままにポール歩き=気まポ」 集合場所はJR高円寺駅南口の広場。 神社は氷川神社・気象神社(同じ空間にあり)、馬橋稲荷神社、神明宮、 寺は高円寺、長善寺、松応寺、西照寺 に寄りました。 松の内が明けるタイミングでもあり、寺はどこも閑散、神社は神明宮が正月らしい賑わいでした。 気象神社は氷川神社の域内にあるこぢんまりとした社ですが、ほかにはないユニークな神社なので訪れる人も多いようです。 たまたま毎月11日にご開帳という長善寺の「伎芸天」を拝むことができました。諸芸上達を願う人が訪れるとのことで、有名芸能人の写真などが飾ってありました。住職が親切に説明してくださいました。 実は、年が明けてから私は片足を少々痛めておりまして、いつもの後方に推すスポーツスタイルの歩き方(ノルディックウォーキング、4点駆動原理)を今回控えて、前方着地スタイル(ポールウォーキング、4点支持原理)で歩きました。全行程約5kmをスムーズに歩けて、ポールのありがたさを実感しました。 阿佐ヶ谷駅前の中華料理屋翠海(すいかい)で乾杯して新年会ランチを味わいました。

feel Health&Beautyさんの投稿
写真1件

田村 芙美子さんの投稿
1/14 今日は腰越グループ例会。新年第一回は 広町緑地から抜け出して鎌倉駅西口集合。源氏山健脚コース(扇が谷裏道階段利用)と海蔵寺ゆるゆるコースにわかれました。15/20名参加でした。

田村 芙美子さんの投稿
1/15 午前は今年初のDOJO  1人ずつ年末年始の一言を言いながらストレッチ。 午後は教養センター1期生(数年前の)PWグループの検定会でした。

新井 恵さんの投稿
スマイルチーム上溝。 午前はスマイル活動。 午後は公民館自主企画案事業の講師アシスタントのお仕事。 #スマイルチーム #健康普及活動 #リズムダンス講座 #シニアダンス #リハビリダンス #脳トレダンス #昭和歌謡ダンス #懐メロダンス #上溝公民館 #上溝公民館まつり #相模原市中央区 #記録 #20250116

田村 芙美子さんの投稿
1/17 今日は3本立て  渋谷教室ではポールウォーキングはじめの一歩。肘引きしながらお互いに触れた肩甲骨の動きに皆さん声を上げて感動!「すごーい!動いてる~」 そして久々の我が古巣 駒沢公園ポール&ノルディックウォーキングクラスに顔を出しました。若い方々がしっかり引き継いで下さって感謝です。お任せしてもう2年以上になります。 その後税理士さんグループに参加。長い1日でした。

杉浦 伸郎さんの投稿
2025研修はポールウォークコーチ認定から無事キックオフしました。 JR輸送サービス組合の皆さんが東日本各地より参加くださり、寒空にも関わらずとても明るい双方向の学びの場となりました。次回は志木市NWPW全国大会で再会しましょう!お疲れ様でした。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【又 来年も皆と来たいです】  混雑を避け遅めの初詣で   聞かれた声です 2025/1/18 いつもさり気なく繰り返えして     いる初詣に 幸せを語ってくれるメンバーの   嬉しい一言です 1900年の歴史ある船橋大神宮 スタッフの名(迷?)ガイドは     大好評でした #船橋ウォーキングソサイエティ #土曜日コース #船橋大神宮初詣

森川 まことさんの投稿
2025年、初ポールウォーキングでした。金町〜江戸川土手〜寅さん記念館〜山本邸〜帝釈天。のコースを歩きました。 インフルエンザ流行中の中、11名で元気に歩きました。 次は3月、ミステリーツアー。

来月以降の開催
台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
2025/2/22 第一屆第三次會員大會 (報名表單)

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)NVIDIA、『NVIDIA Cosmos™ 』を「CES 2025」で発表!
1)世界最大のテックカンファレンス「CES( Consumer Electronics Show) 2025」が1月7日から10日まで、ラスベガスで開催されましたが、1月6日に、 NVIDIA は、自動運転車 (AV) や ロボットなどのフィジカル AI システムの開発を促進するために構築された最先端の生成世界基盤モデル、高度なトークナイザー、ガードレール、および高速ビデオ処理パイプラインで構成されるプラットフォーム、NVIDIA Cosmos™ を発表しました。

NVIDIA の創業者/CEO であるジェンスン フアン (Jensen Huang) は、そこで、次のように述べています。「ロボティクスに ChatGPT の時代が到来しつつあります。大規模言語モデルと同様に、世界基盤モデルはロボットおよび AV 開発の進歩に不可欠ですが、すべての開発者が独自のモデルをトレーニングするための専門知識とリソースを持っているわけではありません。NVIDIAは、フィジカル AI を民主化し、一般的なロボティクスをすべての開発者が利用できるようにするために Cosmos を作成しました。」

2)ヒト型ロボットの最新の開発潮流について、Copilotに聞いてみました。
Q1:ヒト型ロボットの最新の開発潮流は?
最近のヒト型ロボットの開発には、いくつかの興味深い動きがあります。例えば、以下のような進展があります:
1. 人間との協調性の向上: 最新のヒト型ロボットは、より自然な動きと人間との協調性を追求しています。これにより、介護や医療、製造業などの分野での応用が期待されています。
2. AIと機械学習の活用: ロボットは、AIと機械学習を活用して、環境を認識し、適応する能力を持っています。これにより、より柔軟で自律的な行動が可能になっています。
3. エネルギー効率の向上: 新しい材料と設計により、ヒト型ロボットのエネルギー効率が向上しています。これにより、バッテリー寿命が延び、より長時間の使用が可能になっています。
4. 感情認識の進化: ロボットは、顔や声の表情から感情を認識し、適切な反応を示すことができるようになっています。これにより、ユーザーとのコミュニケーションがより自然で人間らしいものになっています。
これらの進展により、ヒト型ロボットはますます多様な分野で活躍することが期待されています。興味深いですね!どのような用途に興味がありますか?

Q2:NVIDIAのIsaac Sim/Omniverseによって、ロボット開発はどのように変化しましたか?
NVIDIAのIsaac SimとOmniverseは、ロボット開発に革命をもたらしました。以下のような主な変化があります:
1. シミュレーションの精度向上: Isaac Simは、物理的に正確なシミュレーションを提供し、ロボットが現実世界で遭遇する可能性のあるさまざまな状況を再現します。これにより、ロボットの学習とテストがより現実的になります2。
2. コスト削減: 物理的なプロトタイプを必要とせずに、シミュレーションを通じてロボットのパフォーマンスを最適化できます。これにより、開発コストが大幅に削減されます2。
3. 安全なテスト: 危険なシナリオをシミュレーションすることで、人間の安全を確保しながらロボットの性能を試験することができます。
4. AIモデルのブートストラップ: 現実世界のデータが限られている場合でも、合成データを使用してAIモデルをトレーニングすることができます。これにより、ロボットの学習プロセスが加速されます2。
5. 多様な環境でのテスト: ロボットを異なる条件や構成でリアルタイムにテストすることができ、より広範な応用が可能になります。
これらの進展により、ロボット開発の効率と効果が大幅に向上し、より多くの応用分野での利用が期待されています。興味深いですね!他に知りたいことがあれば教えてください。
(参考情報)
Advancing Robot Learning, Perception, and Manipulation with Latest NVIDIA Isaac Release;https://developer.nvidia.com/blog/advancing-robot-learning-perception-and-manipulation-with-latest-nvidia-isaac-release/
ロボティクス シミュレーション:https://www.nvidia.com/ja-jp/use-cases/robotics-simulation/

Q3:NvidiaがCESで発表した「Cosmos」プラットフォームは、「ロボット工学分野におけるゲームチェンジャー」と言われるようですが、その理由を教えて下さい。
NvidiaがCESで発表した「Cosmos」プラットフォームは、ロボット工学分野において「ゲームチェンジャー」と呼ばれる理由は、その革新的な技術と応用の広さにあります。このプラットフォームは、AIとロボティクスの分野での研究と開発をサポートするために設計されており、高度な計算能力とデータ処理能力を提供します。
具体的には、Cosmosはロボットの自律性を向上させるためのAIアルゴリズムや、リアルタイムのデータ解析を行うための高性能なハードウェアを備えています。これにより、ロボットがより複雑なタスクをこなすことができるようになり、ロボット工学の分野での新しい可能性が広がります。
このように、Cosmosプラットフォームはロボット工学の分野において、新しい技術の導入と応用を促進し、ゲームチェンジャーとして注目されています。興味深いですね!他に知りたいことがあれば教えてください。
(参考情報)
NVIDIA、フィジカル AI 開発を加速する Cosmos 世界基盤モデル プラットフォームを発表;https://blogs.nvidia.co.jp/blog/nvidia-launches-cosmos-world-foundation-model-platform-to-accelerate-physical-ai-development/
NVIDIA CEO Jensen Huang Keynote at CES 2025;https://www.youtube.com/watch?v=k82RwXqZHY8

Q4:内閣府の「ai戦略会議」で示されている我が国の開発の方向性と具体策について教えてください。
内閣府の「AI戦略会議」では、日本のAI技術の発展とその社会への応用について議論されています。具体的な方向性と策には以下のようなものがあります:
1. AI技術の研究開発促進: AI技術の研究開発を強化し、国内外の研究機関や企業との連携を深めることを目指しています。
2. データの活用: AI技術を活用して、ビッグデータを効率的に活用し、新しい価値を創出することを目指しています。
3. 教育と人材育成: AIに関する教育プログラムを充実させ、AI人材の育成を推進しています。
4. 倫理的なガイドラインの策定: AI技術の利用において倫理的な問題を回避するためのガイドラインを策定し、適切な使用を促進しています。
5. 国際協力の強化: 他国との協力を通じて、AI技術の発展とその応用を促進することを目指しています。
これらの方向性と具体策により、日本はAI技術の分野での競争力を強化し、社会全体の利益を最大化することを目指しています。興味深いですね!他に知りたいことがあれば教えてください。
(参考情報)
内閣府AI戦略会議;https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_senryaku/ai_senryaku.html

Q5:ヒト型ロボット開発における我が国の優れた点と劣る点を教えてください。
日本のヒト型ロボット開発には、いくつかの優れた点と課題があります。
優れた点
1. 精密さと高品質: 日本のロボットは、非常に高い精度と品質を誇ります。例えば、ファナックや安川電機の産業用ロボットは、世界中で信頼されています。
2. 革新性: 日本のロボット技術は常に進化し、新しい技術や応用分野を開拓しています。ホンダの「ASIMO」やソフトバンクの「Pepper」など、多くの革新的なロボットが開発されています1。
3. 多様な応用: 日本のロボットは、産業用、サービス用、医療用、介護用など、幅広い分野で利用されています。特に高齢化社会において、介護ロボットやパートナーロボットとしての活用が期待されています1。
4. 環境への配慮: 省エネルギーで稼働するロボットや、環境に配慮した素材を使用したロボットの開発が進められています。
劣る点
1. コスト: 高い技術力と品質を維持するために、日本のロボットは高価になることがあります。これが、特に中小企業や一般消費者にとっての障害となることがあります。
2. 市場競争: 他国のロボットメーカーとの競争が激化しており、特に中国や韓国の企業が低価格で高性能なロボットを提供しているため、市場シェアを維持するのが難しいです。
3. 技術移転の課題: 日本のロボット技術は高度ですが、技術移転や国際協力の面で課題があります。他国との連携を強化することが求められています。
これらの優れた点と課題を踏まえて、日本は引き続きロボット技術の発展とその応用を進めています。興味深いですね!他に知りたいことがあれば教えてください。
(参考情報)
坂田 信裕、「医療や介護分野におけるロボットの活用と展開」;https://doi.org/10.14949/konpyutariyoukyouiku.46.21

日本ロボット学会誌42巻10号「AI時代の物理的ヒューマン・ロボットインタラクション」;https://robogaku.jp/news/2024/jrsj-info-4210.html

 

2-2)岐阜大学下畑先生からの最新医学情報(2025年1月)
1)PSPと運動失調における評価尺度の進化 ― 米国食品医薬品局(FDA)が進める評価尺度の改訂の意義
**岐阜大学医学部下畑先生の2024年12月29日のFB投稿です**
進行性核上性麻痺(PSP)は,運動障害,認知機能障害,行動変化など多彩な症候を呈する神経変性疾患です.このため臨床評価尺度も多彩な項目を要します.現在,使用されているProgressive Supranuclear Palsy Rating Scale(PSPRS)は28項目から構成されます.なんと米国食品医薬品局FDAがPSPRSを改訂し,10項目から構成されるPSPRS-10という評価尺度を作成したようです.その有用性を検証した論文がスウェーデンからMov Disord誌に報告されています(文献1).
この研究では,従来のPSPRS(PSPRS-28)とFDAが提案した10項目サブスケール(PSPRS-10および再スコアリング版rPSPRS-10)を比較しています.アイテム応答理論(Item Response Theory, IRT)は統計モデルのひとつで,テストや評価尺度を構築・解析するための方法です.被験者の潜在特性(例:能力,病気の重症度,態度など)と,個々のテスト項目(質問や評価基準)の特性との関係を数学的にモデル化する方法のようです.つまりIRTを用いて,28項目のうち情報量が低い項目や,疾患重症度との相関が弱いものが特定され削除されました.その結果できたものが以下の10項目による簡略版です.
1. Gait(歩行)
2. Arising from chair(椅子からの立ち上がり)
3. Postural stability(姿勢の安定性)
4. Sitting down(座る動作)
5. Neck rigidity(頸部筋強剛)
6. Dysphagia for liquids(液体の嚥下障害)
7. Dysphagia for solids(固形物の嚥下障害)
8. Voluntary downward saccades(自発的下向きサッケード)
9. Postural reflexes(姿勢保持)
10. Impact on daily life(日常生活への影響)
著者らは4つの臨床試験および2つのレジストリから得られた979名分のデータを分析し,各尺度の有用性を評価しました.この結果,PSPRS-28では項目間の相関が低く(平均相関係数r=0.17±0.14),特に「イライラ感」「睡眠困難」「姿勢振戦」の3つの項目は他の項目とほぼ相関がないことを示しました.一方,PSPRS-10では選択された10項目が全体の76%の情報量を保持しており,相関も高い(r=0.35±0.14)ことが示されました.また臨床試験シミュレーションでは,治療効果を検出するための被験者数をPSPRS-10は大幅に削減できることが確認されました.例えば,50%の治療効果を検出する場合,PSPRS-10では19名の被験者で済むのに対し,PSPRS-28では102名が必要でした.「rPSPRS-10」はさらにスコアリング方法を変更したものですが,PSPRS-10ほどの感度を示さない可能性があることが示されました.まとめるとPSPRS-10とPSPRS-28はそれぞれ利点があり,PSPRS-10は臨床試験における評価尺度として効率的で,PSPRS-28は疾患の全体像を詳細に把握するために有用です.表にまとめましたが,それぞれの特性を活かし,目的に応じて適切な評価尺度を選択することが重要となります.
この論文に対する論説も掲載され,FDAが主導し,PSPRSの改訂が行われた背景について論じています(文献2).FDAが希少疾患における臨床試験の効率性を高めるため,既存の評価尺度を改善する取り組みを進めていることが強調されています.つまり臨床試験のエンドポイントとして使用されるスケールの「目的適合性(fit-for-purpose)」を重視し,不要な項目を削除し,機能的評価を重視した改訂をすることにより,治療効果の判定をより効率的・効果的にできると述べられています.FDAはPSPRSだけでなく小脳性運動失調の評価尺度であるSARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)も改訂しています(文献3).改訂版は「functional SARA(f-SARA)」と呼ばれるもので,もとの8項目のうち,以下の4項目に絞っています.
1. Gait(歩行)
2. Stance(立位)
3. Sitting(坐位)
4. Speech(発語)
著者らは,他の評価スケールにも同様の改訂が必要であると述べています.FDAはさすがだなぁと思いながら論文を読みました.
1. Gewily M, et al. Quantitative Comparisons of Progressive Supranuclear Palsy Rating Scale Versions Using Item Response Theory. Mov Disord. 2024 Dec;39(12):2181-2189.(doi.org/10.1002/mds.30001)
2. Sampaio C. FDA Boosts the Progressive Supranuclear Palsy Rating Scale! Mov Disord. 2024 Dec;39(12):2127-2129.(doi.org/10.1002/mds.30040)
3. Potashman M, et al. Content Validity of the Modified Functional Scale for the Assessment and Rating of Ataxia (f-SARA) Instrument in Spinocerebellar Ataxia. Cerebellum. 2024 Oct;23(5):2012-2027.(doi.org/10.1007/s12311-024-01700-2)

2)抗NMDA受容体脳炎を再現する動物モデルの確立と治療効果の評価
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年1月3日のFB投稿です**
明けましておめでとうございます.本年もどうぞ宜しくお願いいたします.自分にできること,行うべきことを地道に頑張っていきたいと思います.
さて新年最初に注目した論文は,将来,当科でもこのような研究をしたいという初夢を思い描いた研究です.抗NMDA受容体(NMDAR)脳炎は,自己抗体がN-methyl-D-aspartate受容体のGluN1サブユニットに結合することで引き起こされる若年成人女性に好発する自己免疫性脳疾患です.この疾患は急性に発症し,精神症状や記憶障害,さらにはけいれんや運動異常を伴います.その経過から昔は悪魔による仕業と考えられ,映画「エクソシスト」の原作モデルは,本疾患であったとの指摘もあります.またこの疾患は免疫療法で改善しますが,回復まで長期を要する場合もあり,その体験談が日米で映画化されています.
さて疾患の治療開発には動物モデルが有効です.この疾患にもこれまでいくつか存在しましたが,それぞれに限界がありました.とくに新しい治療法の効果を評価するのに十分な長さの臨床経過とともに,この疾患の神経免疫学的特徴を包括的に再現することが求められていました.バルセロナ大学のDalmau教授らにより開発されたモデルは,これらの課題を克服し,より包括的な病態再現を可能にした点で革新的と言えます.
【動物モデルの構築】
8週齢の雌マウス(C57BL/6J)にGluN1356-385ペプチドを用いて,Day 1とDay 28に皮下注射して免疫化(immunization)を行い,免疫応答を促進するためにAddaVax(油中水型アジュバント)と百日咳毒素を併用しました.これによりマウスは免疫ペプチドおよびその他のGluN1領域に対するNMDAR抗体を血清および脳脊髄液中に産生しました.シナプスおよびシナプス外のNMDARクラスターが減少し,海馬の可塑性が低下しました.これらの所見は,主にB細胞および形質細胞,ミクログリアの活性化,ミクログリアとNMDAR-IgG複合体の共局在,およびミクログリア内エンドソーム内のこれらの複合体の存在と関連していました.行動テストでは,記憶障害や精神病様行動,抑うつ様行動などが確認されました.
【免疫療法とその効果】
35日目より行動の変化が現れた後,一部のマウスにはCD20抗体(35日目)を投与し,45日目から71日目まではNMDARのオールステリックモジュレーター(SGE-301)を投与しました.CD20抗体は,B細胞を除去し抗体産生を抑制すること,SGE-301は,NMDA受容体機能を回復させることを目的としています.実際にCD20抗体により記憶機能やNMDAR密度が回復しました.しかし,B細胞の再増殖によりその効果が徐々に薄れる傾向を認めました.一方,SGE-301はNMDAR密度を回復させ,記憶障害や行動異常を持続的に改善する効果を示しました.両治療を併用することで,効果を最大化できる可能性が示唆されました.
このモデルは,抗NMDAR脳炎の病態解明や治療法開発において非常に有用であると考えられます.自己免疫性脳炎をきたす抗神経抗体は非常に多く,それぞれの病態機序や最適な治療法の解明はほとんどできていない状況です.今後,各脳炎においてこのような動物モデルを作成することが重要だと思いました.
Maudes E, et al. Neuro-immunobiology and treatment assessment in a mouse model of anti-NMDAR encephalitis. Brain. 2024 Dec 24:awae410.(doi.org/10.1093/brain/awae410)

3)運動失調,感音性難聴,末梢神経障害,性腺機能低下症の鑑別診断にオススメの図
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年1月3日のFB投稿です**
図はNeurology誌のClinical reasoning(臨床推論)のものです.症例はインドの16歳女子で,早期発症運動失調(early-onset ataxia, EOA)です.10歳頃から不安定歩行となり,14歳で感音性難聴が出現,また無月経で,高ゴナドトロピン性性腺機能低下症と診断されました.画像検査で小脳萎縮を認め,また末梢神経障害を合併し,生検では髄鞘形成障害性神経障害が示唆されました.小脳性運動失調,感音性難聴,高ゴナドトロピン性性腺機能低下症からPerrault(ペロー)症候群が疑われ,次世代シークエンサーによるエクソーム解析にて,HSD17B4遺伝子のホモ接合性変異が確認されました.
Perrault 症候群は1951年に報告された常染色体潜性遺伝の疾患で,主症状として感音難聴と原発性無月経を呈するほか,運動失調や眼球運動障害,認知機能障害などさまざまな神経症候を認めます.原因遺伝子は複数あり,HSD17B4, HARS2, CLPP, LARS2,TWNK, ERAL1, RMND1, GGPS1, PRORP, YARS, PEX6が報告されています.
この論文で感動したのは図のサンバースト・チャートです.運動失調,感音性難聴,末梢神経障害,高ゴナドトロピン性性腺機能低下症を特徴とする疾患群が視覚的に整理されています.図の中心の運動失調からスタートし,症候,つぎに発症年齢を組み合わせて,一番外側に鑑別診断が記載されています.鑑別診断の枠のグラデーションはその色に相当する症候も認めうるという意味です.一目で代表的鑑別診断が分かるとても便利な図だと思いました.
Chadha D, et al. Clinical Reasoning: Clinical Manifestations and Diagnostic Challenges in a 16-Year-Old With Early-Onset Ataxia. Neurology. 2025 Jan 28;104(2):e210253.(doi.org/10.1212/WNL.0000000000210253)

4)新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(1月4日)
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年1月4日のFB投稿です**
さて今回のキーワードは,ブースター接種は初回接種のみと比較してlong COVIDを23%低下させる,小児や思春期でもワクチン接種がlong COVIDのリスクを軽減する,感染時の腸内細菌叢の組成からlong COVIDを予測できる,COVID-19は神経細胞の機能障害と神経炎症をもたらすことで神経変性疾患の発症や進行を促進する可能性がある,Long COVIDに対し認知行動療法や身体・精神リハビリテーションが有効である,です.
今回で一番の驚きの論文はNat Aging誌に報告された4つ目の論文です.COVID-19感染後の脳の遺伝子やタンパク質レベルでの変化は,アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病などの神経変性疾患で観察されるものと共通だというものです.これまでもCOVID-19感染がアルツハイマー病やパーキンソン病発症の危険因子となることが報告されていましたが,感染後に生じる変化が神経変性疾患と共通しているため,その発症や進行が促進される可能性が示されたわけです.年末年始,熱発者が多いようですし,名古屋市では高齢者のコロナワクチン接種率が2%(1.2万/59.4万)まで低下したという報道もなされています(https://tinyurl.com/2dgmtb7a).残念ながら現在のコロナワクチンは長寿命抗体産生細胞ができにくいので,ワクチンは継続せざるを得ない状況です(Nat Med. 2024 Sep 27;https://tinyurl.com/26amba3m).ワクチンの副反応は十分情報が浸透したと思いますが,後遺症を防ぎ,脳を守るという側面も多くのひとに知っていただきたいと思います.
FBで読みにくい方はブログ(https://tinyurl.com/2yq98cf5)をご覧ください.
◆ブースター接種は初回接種のみと比較してlong COVIDを23%低下させる.
世界中でCOVID後遺症(long COVID)に苦しんでいる人は数百万人いると言われている.治療薬はいまだ開発できておらず,感染予防が現実的な公衆衛生戦略と言える.これまでの検討で,ワクチン接種の有益性が示されているが,オミクロン株によるlong COVID予防におけるワクチン接種の効果は十分に検討されていない.この問題に対するsystematic reviewが報告された.2021年11月以降の感染を対象にした31件の観察研究が特定され,うち11件がメタ解析に適していると判断された.結果として,ワクチン接種を受けた集団では,受けていない集団と比較して,long COVIDのリスクが22%ないし29%(P<0.0001ないしP<0.0001)減少した(10件の研究)(図1).初回接種(mRNAワクチンであれば最初の2回)を行うと,未接種と比較して19%低下させ(3件の研究),ブースター接種は26%低下させた(P<0.0001)(4件の研究).ブースター接種は初回接種と比較して23%低下させた(P=0.0044)(3件の研究)(図2).以上の結果は,ブースター接種がlong COVIDに対してさらなる予防効果をもたらすことを示しており,著者は季節ごとのワクチン接種プログラムの重要性を強調している.ただし複数回のブースター接種の効果についてはデータが不足しており,どの時点で接種を終了できるのかについては結論を出せてはいない.
Rhiannon Green, et al. The impact of vaccination on preventing long COVID in the Omicron era: a systematic review and meta-analysis. MedRxiv. doi.org/10.1101/2024.11.19.24317487
◆小児や思春期でもワクチン接種がlong COVIDのリスクを軽減する.
米国NIHが主導するRECOVER研究プログラムの一環として,ファイザーワクチンBNT162b2のlong COVIDのリスクを軽減する効果を検証した研究が報告された.デルタ株が流行した2021年7月から11月,オミクロン株が流行した2022年1月から11月の期間において,小児(5~11歳)ないし思春期(12~20歳)を対象とした.ワクチンが感染予防を通じてlong COVIDリスクを軽減する間接効果と,感染とは独立してリスクを軽減する直接効果を検討した.結果として,デルタ株の流行期において,思春期のワクチン接種はlong COVIDの発症リスクを95.4%低下した(小児コホートのデータなし).オミクロン株の流行期では,小児における予防効果は60.2%,思春期では75.1%と推定された.ただし直接効果は,3つのコホートにおいて統計的に有意ではなく,効果の大部分は感染予防による間接効果によるものと考えられた.以上より,デルタ期およびオミクロン期において,BNT162b2が小児および若年者におけるlong COVIDのリスクを低減するのに有効であることが示唆された.
Wu, Qiong et al. Real-world effectiveness and causal mediation study of BNT162b2 on long COVID risks in children and adolescents. eClinMedi, Volume 79, 102962.(doi.org/10.1016/j.eclinm.2024.102962)
◆感染時の腸内細菌叢の組成からlong COVIDを予測できる.
Long COVIDの発症リスクに腸内細菌叢がどのように関連しているかを調べた縦断的研究が米国メイヨークリニックから報告された.799名の外来患者(SARS-CoV-2陽性者380名,陰性者419名)を対象に,感染初期とその後の糞便サンプルを収集し,腸内細菌叢を次世代シーケンサーで解析した.この結果,long COVIDを発症した感染者は,感染初期の段階で特有の腸内細菌叢構成を示していた.症状から4つのクラスターに分類すると,消化器・味覚/嗅覚障害クラスターでは最も多くの細菌種(50種)で対照群と差異が認められ,Lachnospiraceae科(30種)やAnaerovoracaceae科など,短鎖脂肪酸を産生する細菌が増加していた.また疲労クラスターではLactobacillus属やSellimonas属など,エネルギー代謝に関連する細菌が増加していた.心肺クラスターおよび筋骨格系・神経精神クラスターでは特定の細菌種との関連は顕著ではなかった.つまり腸内細菌叢の変化が顕著な症状群(消化器症状群,疲労群)と,それほど関連のない症状群(心肺症状群,筋骨格系/神経精神症状群)に分類できることが分かった(図3).さらに機械学習モデルを用いた予測では,腸内細菌叢データのみでlong COVIDの発症を高精度で予測できた.臨床データを追加しても,予測精度の向上はわずかであったため,腸内細菌叢が患者の健康状態や免疫応答をより反映している可能性が示唆された.
Comba IY, et al. Gut Microbiome Signatures During Acute Infection Predict Long COVID. bioRxiv [Preprint]. 2024 Dec 11:2024.12.10.626852.(doi.org/10.1101/2024.12.10.626852)
◆COVID-19は神経細胞の機能障害と神経炎症をもたらすことで,神経変性疾患の発症や進行を促進する可能性がある.
COVID-19に伴う神経症状の分子メカニズムを解明することを目的として,COVID-19にて死亡した患者20名と対照群22名の複数の脳領域において,プロテオミクス,空間トランスクリプトミクス,バルクRNA解析を行った研究が米国から報告された.脳全体の変化では深層興奮性ニューロンではシナプスおよびミトコンドリア経路の広範な異常が観察され,グリア細胞では神経炎症経路が上昇していた.これらの変化はパーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患に共通するものが含まれていた(図4).空間的トランスクリプトミクスでは前頭葉灰白質と橋核で遺伝子発現変化が確認され,抗ウイルス応答遺伝子の発現上昇とともに,低レベルのウイルスmRNAが検出された.しかし直接的なウイルス感染よりも,全身性の炎症や血液脳関門の損傷が原因と考えられた.さらにシナプス小胞経路やミトコンドリア機能に関わる遺伝子のダウンレギュレーションと,グリア細胞や血液脳関門細胞マーカーのアップレギュレーションが確認された.以上より,COVID-19感染後の遺伝子やタンパク質レベルでの変化はアルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病などの神経変性疾患で観察されるものと重なっていることから,神経変性疾患の発症や進行を促進する可能性が示唆された.
Zhang T, et al. Brain-wide alterations revealed by spatial transcriptomics and proteomics in COVID-19 infection. Nat Aging. 2024 Nov;4(11):1598-1618.(doi.org/10.1038/s43587-024-00730-z)
◆Long COVIDに対し認知行動療法や身体・精神リハビリテーションが有効である.
Long COVIDに有効な治療を検討したliving systematic review(発表後に新しい研究結果が報告されるとレビュー内容が更新されるもの)がBMJ誌に発表された.ランダム化比較試験24件(計3695名のデータ)を分析した.薬物療法4件,身体活動またはリハビリテーション8件,認知行動療法(CBT)3件,食事療法4件,医療機器および技術4件,身体運動とメンタルヘルスリハビリテーションの組み合わせ1件であった.この結果,CBTや身体・精神リハビリテーションが有効であることが示された.CBTは,疲労や集中力低下を軽減し,オンラインで提供される場合でも効果がある可能性が高いことが示された.一方,身体・精神リハビリでは,健康全般の改善や症状回復が期待できる.具体的には,週3〜5回の断続的な有酸素運動が身体機能の改善に有効であると結論付けられた.ただし,これらの治療がすべての患者に適用できるわけではなく,症状の異質性や個々の患者の状況を考慮する必要がある.ボルチオキセチン,レロンリマブ,プロバイオティクスとプレバイオティクスの併用,コエンザイムQ10,扁桃体と島回の再訓練,L-アルギニンとビタミンCの併用,吸気筋トレーニング,経頭蓋直流電流刺激,高圧酸素療法,教育アプリなども検討されたが,エビデンスは低いか.不足している状況であった.
Zeraatkar D, et al. Interventions for the management of long covid (post-covid condition): living systematic review. BMJ. 2024 Nov 27;387:e081318.(doi.org/10.1136/bmj-2024-081318)

5)アミロイドβ抗体(アデュカヌマブ)はAβ・タウ動物モデルで,タウ病理・神経変性を抑制せず,グリア細胞を活性化する
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年1月7日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)に対し,近年,アミロイドβ(Aβ)を標的とした抗体療法が臨床応用されました.しかし抗体療法がタウ病理や神経変性に及ぼす影響については十分明らかにされていません.これは過去の動物モデルを用いた研究の多くは,Aβ病理に特化した動物モデル(APP/PS1や5xFADなど)を使用し,タウ病理を持たないモデルが中心であったためです.
Brain誌に,米国マサチューセッツ総合病院らのグループによる研究が掲載されています.この研究では,Aβプラークとタウ病理の両方を持つトランスジェニックマウスモデル(APP/PS1xTau22)を用い,抗Aβ抗体「アデュカヌマブ」の効果を検証しています.著者らは,6カ月齢のAPP/PS1✕Tau22マウスにアデュカヌマブまたは対照IgGを週1回,30mg/kgの濃度で12週間投与し(図上),治療終了後,9カ月齢の時点で,Aβプラークの除去効果やタウ病理への影響,さらには神経変性やグリア細胞の反応を評価しています.
まずアデュカヌマブはAβを除去し,Aβプラークの沈着が約70%減少しました.この効果は,特に小型のプラーク(10-140 µm²)の除去で顕著でした.図左下は,治療群におけるAβプラークの明らかな減少を示しています.しかし大型プラーク(180 µm²以上)の除去は限定的であり,完全なAβ除去は達成できませんでした.
一方,Aβ除去がタウ病理や神経変性に与える効果は限定的であることが分かりました.タウの異常リン酸化(AT8;図右下)や神経原線維変化は治療にも関わらず進行しており,海馬CA1領域の神経細胞数(NeuN染色)の減少,樹状突起の縮小,さらには後シナプス(PSD95)の消失もアデュカヌマブ治療で改善されませんでした.以上より,Aβ抗体療法単独ではタウ病理に関連した神経変性を十分に抑制できないことが示されました.
加えて印象的だったのは,Aβ抗体療法はグリア細胞に予期しない影響を及ぼしたことです.つまりAβプラーク周囲でのIba1陽性ミクログリアの増加が生じ,さらにGFAP陽性アストロサイトの増加も顕著でした.また微小出血の頻度が増加することも確認され,治療の安全性についての課題も浮き彫りになりました.
この動物モデルがどれほどヒトのアルツハイマー病を模倣したものかという批判はあるかと思いますが,少なくとも従来モデルよりは改善されていますので,この研究は,Aβ抗体療法の課題を示したものと言えると思います.Aβ除去だけでは,タウ病理や神経変性の進行を効果的に抑えることは難しい可能性が示唆され,今後はタウやグリア細胞もターゲットとした複合的な治療戦略が求められる方向に進むのかもしれません.
Welikovitch LA, et al. Hyman, Tau, synapse loss and gliosis progress in an Alzheimer’s mouse model after amyloid-β immunotherapy, Brain, 2024;, awae345, https://doi.org/10.1093/brain/awae345

6)味覚性発汗とFrey症候群とホロコースト
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年1月8日のFB投稿です**
朝のカンファレンスで,味覚性発汗(gustatory sweating)とFrey症候群について議論しました.まず味覚性発汗とは味覚刺激により顔面に発汗が生じる現象で,一部の健常者には生理的味覚性発汗が認められますが,耳介側頭症候群(Frey 症候群)や交感神経切除後に生じる味覚性発汗など病的なものもあります.
Frey症候群は,耳側側頭神経(V3:下顎神経の分枝)が耳下腺周囲の手術などで損傷した際に生じます.同神経に含まれる唾液を分泌する副交感神経と発汗を引き起こす交感神経の間で異常な再生や交差神経支配が生じ,味覚刺激により顔面や頭皮で発汗が増加します.私は,Frey症候群は耳介周囲の発汗と記憶していたのですが,頭皮も発汗するようです(文献1).あと手術もなく両側性に生じた症例も報告されていました(文献2).耳下腺炎や帯状疱疹でも生じるようです.治療は発汗部位へのボトックスが有効のようです.
Freyという人物について知らなかったのでいつもの趣味で調べてみました.Lucja Frey(1889-1943?)という女性の神経内科医でした(文献3).1889年に現在のウクライナのリヴィウで生まれ,1923年にワルシャワ大学で医学の学位を取得.1925年に神経内科医としての資格を得た後,ワルシャワ大学の神経学クリニックで1928年まで勤務しました.この間,彼女は43本の学術論文を執筆しました.1923年,先生は耳介側頭神経の損傷により発生する味覚性発汗の病態生理を解明し,論文を発表しました.この病態を示す詳細な解剖学的図を示しています.
しかし,第二次世界大戦中のナチスによるユダヤ人迫害により,Frey先生の運命は一変します.ナチスはポーランドに,ユダヤ人を隔離するための強制居住地域(ゲットー:Ghetto)を多数設置しました.有名なものとして,ワルシャワ・ゲットー,クラクフ・ゲットー,リヴィウ・ゲットーなどがあります.1941年にドイツ軍がリヴィウを占領すると,彼女はゲットーに移送されます.そのなかのクリニックで医療活動を続けましたが,1943年にはクリニックの職員や患者とともに殺害されたか,強制収容所に送られたとされています.Frey先生の名前は,彼女が残した功績とともに,困難な時代を生き抜いた医療者の象徴として記憶されるべきと思いました.
1) Landman A, et al. Teaching neuro-image: a case of gustatory hyperhidrosis. Acta Neurol Belg. 2024 Apr;124(2):639-640.
2) Patrick B, et al. Botulinum Toxin for the Treatment of Postmenopausal Craniofacial Hyperhidrosis. Cureus. 2024 Sep 1;16(9):e68401.
3) Redleaf M. The Auriculotemporal Nerve Syndrome, Lucja Frey, and the Holocaust. Ear Nose Throat J. 2023 Sep 14:1455613231199357.

7)片頭痛患者におけるCGRP関連抗体薬の心血管安全性がリアルワールド・データで確認された!!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年1月11日のFB投稿です**
片頭痛治療において非常に重要な論文が報告されました.片頭痛は女性に多い疾患で,世界中で15%もの人が罹患していると言われています.近年,片頭痛特異的な予防薬として,CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)またはその受容体を標的とするモノクローナル抗体が臨床応用され,非常に大きなインパクトを与えています.一方で,CGRPは心血管系における保護的な役割があるとされており,CGRPを阻害するこれらの薬剤が心血管疾患のリスクを増加させる可能性について懸念がありました.
JAMA Neurology誌の最新号に,フロリダ大学を中心とするグループから,米国Medicareに登録された片頭痛患者を対象に,CGRP関連抗体薬と米国で慢性片頭痛に対し承認されているボツリヌス毒素A(onabotulinumtoxinA)の心血管安全性を比較した後ろ向きコホート研究が報告されました.2018年5月から2020年12月までのデータを用い,心筋梗塞や脳卒中といった心血管イベントの発生率を調べました.またCGRPは末梢血管を拡張させる強力な作用を持つ神経ペプチドであるため,副次評価項目として高血圧クライシス,末梢血管再建術(末梢血管疾患が新たに生じたか,もしくは既存の疾患が増悪したかを反映する指標),Raynaud現象(指先などの末梢組織における血流調節の障害を示唆)も調べています.
さて結果ですが,計9153人の片頭痛患者が参加し,CGRP関連抗体薬群が5153人(年齢57.8歳,女性83.6%),ボツリヌス毒素A群は4000人(年齢61.9歳,女性83.8%)でした.追跡期間の中央値は,前者が4.3か月(四分位範囲:2.0~9.5か月),後者が4.4か月(1.6~8.8か月)でした.この追跡期間中,主要評価項目である心筋梗塞または脳卒中の複合イベントの発生率において,両群間で統計的に有意な差は認められませんでした(調整後ハザード比[aHR]:0.88,95%信頼区間[CI]:0.44–1.77).下図のフォレストプロットが分かりやすく,CGRP関連抗体薬とボツリヌス毒素Aを比較したリスクの調整後ハザード比と95%信頼区間がプロットされています.例えば,心筋梗塞のaHRは0.86(95% CI:0.30–2.48),脳卒中のaHRは0.90(95% CI:0.35–2.27)と,いずれもリスク増加は示されていません.なお,この結果は,高齢者や既存の心血管疾患を持つ患者でも一貫しており,CGRP関連抗体薬の安全性が支持されるものでした.
また,副次アウトカムとして調べられた高血圧クライシス,末梢血管再建術,Raynaud現象についても,以下のようにリスクに有意差はありませんでした.
高血圧クライシス(aHR: 0.46,95% CI 0.14–1.55)
末梢血管再建術(aHR: 1.50,95% CI 0.48–4.73)
Raynaud現象(aHR: 0.75,95% CI 0.45–1.24)
まとめると本研究は,片頭痛患者におけるCGRP関連抗体薬の心血管安全性をリアルワールド・データで示した初めての大規模研究であり,特に高齢者や心血管疾患を有する患者にとって重要なエビデンスを提供しています.一方で,追跡期間が短かったことや,Medicareデータに基づくため臨床的な詳細情報が不足している点など,いくつかの限界も指摘されています.著者らも,今後さらに長期間の追跡や他の集団における検証が必要であると述べています.しかしCGRP関連抗体薬の安全性を裏付けるデータが示されたことは,日常診療において非常に大きな意義があると言えます.
Yang S, et al. Cardiovascular Safety of Anti-CGRP Monoclonal Antibodies in Older Adults or Adults With Disability With Migraine. JAMA Neurol. 2025 Jan 6.(doi.org/10.1001/jamaneurol.2024.4537)

8)タウのリン酸化はヘルペスウイルス1型感染から神経細胞を保護している!!アルツハイマー病治療戦略へのインパクト
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年1月15日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)の病態にアミロイドβやリン酸化タウ(p-tau)が関与します.しかしこれらを脳に蓄積させる要因はよく分かっていません.しかし近年,ADとウイルス感染の関連が注目されており,そのなかにはヘルペスウイルス1型(HSV-1),帯状疱疹ウイルス,新型コロナウイルスなどが含まれます.今回,Cell Reports誌に掲載されたイスラエルと米国からの研究では,HSV-1とタウリン酸化の驚くような関係が示されています.
著者らは,まず,ヒトのAD患者の脳サンプルを用いて,HSV-1感染がタウのリン酸化を引き起こすことを明らかにしました.具体的には,HSV-1タンパク質のICP27(ウイルスの遺伝子発現を調節し,宿主細胞の免疫応答を抑制してウイルス複製を促進する重要な役割を果たします)が進行したAD脳サンプルで顕著に増加し,これがp-tauと共局在していることを確認しました.図2では,ICP27とp-tauが進行したADの嗅内皮質および海馬で強く共局在する所見が示されています.
つぎにHSV-1感染がタウのリン酸化を引き起こす可能性について検討しました.HSV-1感染はcGAS-STING経路(細胞内のDNAを認識するcGASが活性化され,STINGを介して免疫応答を引き起こし,炎症や抗ウイルス応答を促進する経路です)を介してタウのリン酸化を起こすことを確認しました.つまりHSV-1のDNAを認識することでこの経路が活性化されるようです.そしてこの経路の下流にあるTBK1(TANK-binding kinase 1)がタウをリン酸化し,ICP27の発現を抑制することで,HSV-1タンパクの発現を減少させ,神経細胞の生存率を向上されることが実験的に示されています(図1).
以上よりこの研究は,タウのリン酸化がHSV-1感染に対する自然免疫応答として機能し,神経保護的な役割を果たす可能性を示したものです.cGAS-STING-TBK1経路がタウのリン酸化を引き起こし,それがHSV-1タンパク質の発現を抑制することが明らかになり,ADの発症・進行における単純ヘルペスウイルス感染の役割と,それに対する免疫応答の重要性を示した研究と言えます.
しかしよく考えるとこの論文の今後のAD研究への影響は大きいように思います.
1)HSV-1感染がADの進行に関与する機序が示されました.つまりHSV-1感染のワクチン等による制御がAD予防の重要な標的となり得ることを示唆しています.
2)HSV-1に対するリン酸化タウの神経保護能が示されました.現在,アミロイドβ抗体からタウを標的とする抗体等の治療薬に関心が移りつつありますが,これらによるタウの除去は,上記の免疫応答を妨げ,予期しない影響を引き起こす可能性が大きいです.つまりHSV-1感染に対する免疫応答が抑制され,神経細胞の生存に不利な影響を与える恐れがあります.
ADの病態はかなり複雑で,その治療戦略も混沌としてきた感じがします.個人的にはタウよりウイルス感染制御が現実的な治療のように思いました.
Hyde VR, et al. Anti-herpetic tau preserves neurons via the cGAS-STING-TBK1 pathway in Alzheimer’s disease. Cell Rep. 2024 Dec 26:115109.(doi.org/10.1016/j.celrep.2024.115109)

9)ハンチントン病の新しい発症メカニズムの発見!CAGリピートは神経細胞でさらに伸長する
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年1月18日のFB投稿です**
ハンチントン病(HD)は,常染色体顕性遺伝を呈する神経変性疾患で,原因は huntingtin(HTT)遺伝子内のCAGリピートの異常伸長です.HD患者は36回以上(ほとんどの場合40~49回)になります.未解明な点が多く,代表的なものとしては以下が挙げられます.
1)細胞型特異性:主に線条体の中型有棘ニューロン(SPNs)が喪失するが,インターニューロンやグリア細胞は生存すること.
2)長い潜伏期間:典型的には40~50歳で運動症状が現れるが,それ以前は認知機能や運動機能が健常者と同程度であること.
3)HTT遺伝子変異が神経変性を引き起こす具体的なメカニズム
最新号のCell誌に,マサチューセッツ工科大学およびハーバード大学などの研究チームが,体細胞内でのDNAリピート拡大がこの疾患にどのように影響するかを明らかにした研究が報告されました.これまで脳組織全体や血液サンプルから抽出したDNAを用いてリピートの長さを測定する方法が一般的でしたが,この研究では単一細胞でのCAGリピート長の測定と,同一細胞でのRNA発現解析を同時に行える技術を開発して検討した点が画期的と言えます.
研究チームは,患者群50名と対照群53名の線条体組織を解析し,線条体ニューロンの減少が病気の進行と共に顕著になることを示しています.直接経路(線条体から出発し,直接,内節淡蒼球および黒質網様部に投射する)および間接経路(線条体から出発し,まず外節淡蒼球に信号を送り,そこから視床下核を介して淡蒼球内節および黒質網様部に間接的に投射する)という2種類のニューロンについて解析を行い,間接経路ニューロンが早期に失われやすいことが明らかにしました.この変化は舞踏運動の出現に関与している可能性があります.
また患者脳を細胞ごとに解析し,HDを引き起こすHTT遺伝子のCAGリピートが,病気の進行に伴い体細胞内で増加することを発見しました!とくに線条体のニューロンでは,初期にはリピートが安定しているものの,加齢とともに徐々に伸長し,特定の閾値を超えると急速に毒性を発揮することを示しました.この現象は「somatic expansion(体細胞伸長)」と呼ばれ,白血球DNAでは見られない脳特有の変化であることも確認されました.
注目すべき発見は,CAGリピートの数が150を超えるとニューロンが急速に傷害されるという点です.CAGリピートは通常は40程度ですが,時間が経過し80を超えると急速に拡大し,150,500を超えると神経毒性を持ちます.つまり「変異したHTTタンパク質の慢性的な毒性」ではなく,「リピート数が閾値を超えることで突然細胞が死ぬ」という新たなメカニズムを提唱するものです.これがニューロンの遺伝子発現を変化させ,細胞死を引き起こすということです.図で説明すると,「Phase A」では,体細胞内でCAGリピートが緩やかに拡張する.この段階は数十年という長い時間をかけて進行し,臨床的な症状は現れません.「Phase B」では,CAGリピートが急速に拡張し,短期間(数年)で150リピートを超える段階に達します.この急速な拡張が,遺伝子発現に影響を及ぼす準備段階となります.「Phase C」では,CAGリピートが500回以上に達し,これが原因で500以上の遺伝子発現が異常を来す段階に入ります.この段階は数か月という短期間で進行し,細胞内の転写機構や神経機能に深刻な影響を及ぼします.最終段階である「Phase D」では,脱抑制危機(de-repression crisis)が発生し,神経細胞が不可逆的に死に至ります.このプロセスにより,HDの特徴的な神経変性が完成します.図の下部は,年齢と線条体ニューロンの生存率の関係を示しています.
また研究では体細胞伸長は,DNA修復酵素(特にMSH3)による減少である可能性が高く,修復過程でCAGリピートが誤って伸長されると考えています.よってMSH3や関連する酵素をターゲットにしてCAGリピートの伸長を抑制することで,症状の発現を遅らせたり進行を抑えたりする治療法が考えられます.すでに発症している患者においても,まだ毒性閾値を超えていないニューロンに作用して病気の進行を遅らせる可能性があります.今回の研究は,HDの発症・進行における新しいメカニズムを示すだけでなく,将来の治療法開発に向けた重要な基盤となる可能性があります.
最初に紹介した3つの問題点について完全解明ではないかもしれませんが,大きな進展が得られました.CAGリピート病は私の学位論文のテーマですが,このようなメカニズムがあるとは夢にも思いませんでした.おそらくHD以外のCAGリピートでも同じことが起きているのではないかと思います.SCA6やCAGリピート以外のリピート病(例:筋強直性ジストロフィーや脆弱X症候群など)はどうなのかも気になります.近いうちにどんどんデータが報告されるのではないかと思います.
Handsaker, Robert E. et al. Long somatic DNA-repeat expansion drives neurodegeneration in Huntington’s disease. Cell, January 16,(doi.org/10.1016/j.cell.2024.11.038)

関連情報
岐阜大学医学部下畑先生は最新の医学情報を活発に発信されています。前月中のFB投稿については『2024年12月のニュース』をご覧下さい。

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)