新春を迎え、コロナで落ちた体力を回復するためにウォーキングを始めよう、とお考えの方は少なくないと思います。
「ポールウォーキング」は、通常のウォーキングより運動量が多く、両手にポールを持ち自力で歩行することができ、医師から運動を禁止されていなければ、誰でもが取り組める歩行メソッドです。
初めての方にも「ポールウォーキング」に取り組んでいただけるよう、安藤邦彦先生が昨年4月に「聖教新聞」と行ったインタビュー記事の内容に、「スタンダード技術の動画」や「筑波大学の山田実先生が配信された動画」へのリンクやミニ解説などを加えてみました。
「ポールウオーキング」への『手引き』となって、1人でも多くの方が「ポールウォーキング」にチャレンジしていただければ、幸いです。
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「ポールウォーキング」で歩こう
新緑まぶしい季節。2本のポールを使って歩く「ポールウォーキング」を始めてみませんか? 姿勢が良くなり、運動効果も抜群といわれています。考案者の医学博⼠・安藤邦彦さん(写真)に、効果や実践⽅法について聞きました。
「ポールウオーキング」の3つのポイント
① 普段使わない筋⾁を使い、姿勢を改善
② 腕を振ることで上半⾝もトレーニング
③ 杖のように体重をかけるのはNG
運動効果を感じつつ安全に
初めに、なぜポールを使うといいのか説明します。
ケガをしたり、脚の筋⼒が弱っていたりする⼈が、杖のように使って歩くものと思われがちですが、そうではありません。杖と違って、体重をかけて使ってはいけません。⼀番の特⻑は、ポールを使うことで、⾃分の姿勢を改善できる点です。また、全⾝の筋⾁を使って、バランス良く鍛えながら、安全に歩くことができます。⾃分では“正しい姿勢で歩いている”と考えていても、実際にポールを使ってみると、強制的に姿勢が良くなる感覚や筋⼒不⾜を体感できるはずです。背中が曲がるなど姿勢が悪くなると、股関節の可動域も制限され歩幅も狭まってしまいます。ポールを使って歩くことで、体に余計な負担をかけず、各関節を⼤きく動かしていくことができるのです。
ポールは全⾝の筋⾁をバランス良く鍛えるための道具であり、“パーソナルトレーナー”といえるでしょう。
(参考1)「正しい姿勢で歩くウォーキング」
筑波大学の山田教授が「Web版集いの広場」で配信されている動画です。
ウオーキング1(第11回配信)
ウオーキング2(第12回配信)
ノルディックウォーキングや登山との違い
2本のポールを使って歩く運動には、主にポールウォーキングとノルディックウォーキング、⼭登りの三つがあります。似ていますが、それぞれ歩き⽅もポールの形状も、運動負荷も異なります。ノルディックウォーキングは、雪上で⾏うクロスカントリーの夏⽤トレーニングメニューとして始まったスポーツです。運動強度が⾼いため、運動習慣のない⼈にはやや難しいかもしれません。ポールウォーキングから始めて、体⼒、筋⼒がついたらノルディックウォーキングや登⼭に挑戦してもいいでしょう。
ポールウォーキングの最終ゴールはポールなし
ポールウォーキングを始める際、いきなり背筋を無理して伸ばしたりするとけがをする恐れがあります。最初は、⾃分にとって楽な姿勢でポールの⻑さを合わせましょう。⻑年かけて体に染み付いた姿勢は急には直らないものです。慣れてきたら徐々にポールの⻑さを伸ばし、無理せず姿勢を正していくことが⼤切です。歩⾏の運動効果を上げることもポールウォーキングのメリットです。ポールを持つことで、腕の振りをより意識するため、肩甲⾻など普段使われづらい部分も動き上半⾝が鍛えられます。上半⾝と下半⾝が連動した全⾝運動になり、歩幅も広がります。最終⽬標は、ポールがなくても正しい姿勢で歩くことです。ポールウォーキングで⾝に付けた正しいフォームは、ポールを持たないウォーキングやジョギングにも⽣かすことができます。
(参考2)「ポールウォーキング」のスクリーニング
加齢により萎縮しやすい筋は、頸部筋群、僧帽筋、広背筋、腹筋群、中殿筋、大殿筋、大腰筋、大腿四頭筋などの抗重力筋で、歩行中に活動する筋肉は、脊柱起立筋、腹筋群、中殿群、大殿群、大腰筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋、前脛骨筋などです。
ポールウォーキングでは、「つま先上げ」、「かかと上げ」、「膝上げ」の3つの動作で事前スクリーニングを行い、左右の差異などにも注目します。
=>動画:3)スクリーニング
・つま先上げ
・かかと上げ
・膝上げ
(ミニ解説)ウォーキングする時だけでなく、普段からこの3つの動作を行い、下半身を鍛えておきましょう。
準備が大切
ポールウォーキングで必要なものは、「ポール」「ウオーキングシューズ」「動きやすい服装」だけです。
専⽤のポールは、多くのスポーツ⽤品店で購⼊できます。先端に球状のゴムが付いていてバランスを取れるようになっています。ノルディックウォーキング⽤や登⼭⽤とは、⽤途が異なるので、購⼊する場合は間違えないように注意してください。
またポールは最適な⻑さで使うことが⼤切です。今のポールの多くは、⻑さが調整可能な伸縮タイプです。まずは真っすぐ⽴った姿勢で、肘を直⾓に曲げ、⼿から地⾯までの⾼さにポールの⻑さを合わせましょう。このとき、ポールは握らず、グリップの上に⼿を乗せた状態で肘を直⾓にしてください。緩んで⻑さが変わると事故につながります。しっかり締めましょう。
=>動画:1)ポールの長さの調整
(ミニ解説)疾患を抱えている場合、疾患に応じて、ポールの長さを意図的に変えることが必要になります。
理想のフォーム
・顎を引く
・肩の⼒を抜いてリラックスする
・背中はスッと伸ばす
・おへその辺りから脚が伸びているような、「⻑い脚」をイメージして
・グリップは強く握らない
・腕は⾃然に振る動作で
=>動画:2)グリップ
・右手
・左手
(ミニ解説)このグリップで、ポールは前後にスイングし易くなり、左右には振れにくくなります。
・後ろ姿もかっこよく⾒えるよう、脚は伸ばす
意識したいポイント
・⽬線は、⽬の⾼さで15メートル以上先を⾒る
・普段よりも「半歩」広い歩幅で
・前に出した⾜の反対側の⼿で持ったポールを、かかとの辺りに置く
=>動画:6)基本フォーム
(ミニ解説)理想のフォームやスタンダード技術のその他の事項も、直ぐにすべてをマスターするのは難しいです。時間を掛けて、練習を積み重ねましょう。
歩き方(基本)
まずは公園の歩⾏路のような平たんな道から始めるのがおすすめ。うまくできるようになってきたら、なだらかな坂道や階段へとステップアップするのがいいでしょう。歩⾏⾯は、⾬上がりでつるつる滑る道や、ザラザラした砂利道はできるだけ避け、安全に歩ける場所を選んでください。
まずは基本の「1段ギア」で歩き始め、慣れてきたら「2段ギア」にも挑戦。⾜の運び⽅は、「かかと着地」を意識してください。
●スタンダードスタート
ポールウォーキングに慣れるまでは、歩き始める前にスタンダードスタートを繰り返します。「右手」と「左足」、「左手」と「右足」と脳も刺激します。振り出す手と踏み出す足が同じ側になる「ナンバ歩き」の予防や矯正にも役立ちます。
=>動画:4)スタンダードスタート
・スタートポジション
・スタート
(ミニ解説)「ポールウォーキング」を始めた時期は、この2つの動作をしっかり練習しましょう。ポールを持っている効果を、体感してください。歩行途中でリズムが狂い「ナンバ歩き」になってしまったら、歩行を止めて、再度スタンダードスタートから始めましょう。
●1段ギア
・腕は⾃然に振ってポールを着地
=>動画:5)腕の振り
(ミニ解説)腕の動作は、肘を伸ばす(パンチ)と、肘をひく(プル)を交互に繰り返します。腕の動作は体幹の回旋を通じ歩幅を広げます。パンチ動作は左右のバランス動作をサポートし、プル動作は前後のバランス動作をサポートします。
・反対側の⾜部(かかと〜⼟踏まず付近)がポールの横に来るように⾜を運ぶ
・普段、散歩や買い物のときと同じ、歩きやすい⾃然な歩幅で
・まずは1⽇15分くらいからスタート
※無理して⻑時間、毎⽇する必要はありません。疲れたら休みましょう。
●2段ギア
・1段ギアよりもややスピードアップ
・⻑い腕をイメージして、特に前に⼤きく振る
・歩幅もやや広く取り、1段ギアより⾜部半分くらい前へ
足の運び方
・かかとから地面につける(かかと接地)
・かかとから⽖先まで、靴底をしっかりと地⾯につけて、重⼼移動する
・かかとから上げて、⽖先を地⾯から離す(つま先離地)
歩き方(応用)
1)上り坂
・上体・上体はやや前傾ぎみに、ポールは反対側の⾜の横に置く
2)下り坂
・背筋を伸ばして歩幅を狭め、重⼼を低く保ち、ポールは反対側の⾜のかかと辺りに置く
3)階段を上る
・1、2段上に両⽅のポールを同時に置いて腕の⼒も使って上る
4)階段を下りる
・背筋を伸ばして重⼼を低く保ち、⾜から先に下りる
以上です。
●安藤邦彦プロフィール
あんどう・くにひこ 医学博⼠。一般社団法人⽇本ポールウォーキング協会(略称、NPWA)名誉会⻑。整形外科専⾨医。杏林⼤学医学部卒業後、同⼤学整形外科学教室へ⼊局。同⼤学医学部専任講師(整形外科学)を経て、1994年、⻑野市に整形外科専⾨クリニックを開設。歩⾏科学や整形外科学の⾒地からポールウオーキングメソッドを考案、ポール等、共同開発。著書多数。
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ご覧いただき、「ポールウォーキング」にご関心を持たれたでしょうか?
もしご関心を持たれたならば、日本ポールウォーキング協会(NPWA)の認定指導員が行っている体験会やクラブ活動に、是非、ご参加下さい。
何より楽しくポールウォーキングができ、楽しい仲間もできると思います。ポールウォーキングを2~3か月続けることで、歩幅が広がり体力も徐々に回復し始めると思います。スタンダード技術も、追々、身に付くはずです。
(文責)峯岸 瑛(みねぎし あきら)
(作成日)2023年1月18日
(関連ページ)
記事:スタンダード技術
動画:「1.スタンダード技術を動画で学ぶ」